「ただいまー」

玄関を明ければドタバタと近づく足音が近づいてくる。


「名前さん、おかえりなさい!!」
「鶴姫ちゃん毎度毎度お迎えありがとね」
「いえいえ。それでさっきから私気になっているんですがその笹はどうしたんですか?」


ああやっぱりこの子達の身近にはなかったんだと実感する。

「おう名前おかえり」
「遅かったな」
「ただいまです、元親さん元就さん」



奥にいた元親さん、元就さん、鶴姫ちゃんはどうやらこの時代の人ではなく、正直未だに忘れかけるんだけど話によると遠い昔の戦国時代の人たちらしい。
しかも三人とも私でも名前を知っているぐらいの名のあるお偉いさん。

長曾我部元親、毛利元就、鶴姫…


それでもこちらの時代に来てしまえばジェネレーションギャップのようなものがわくらしい。
もう世代というより時代越えなのだけれども。

今すでに三人の視線は笹にくっついて離れない。


「それで朝私が用意しておいた紙に三人ともお願い書きましたか?」

三人の視線が相変わらず笹の方に持って行かれていたので笹を自分の顔の目の前に持ってくれば目がばっちりとあい、同時にこくりと頷いたのが見えた。


「じゃあベランダで飾ろっか」
「は?」
「”は?”じゃないですよ元親さん、あと元就さんもこいつ何言ってるんだみたいな目で見ないでください。
 ………二人共たまには鶴姫ちゃんのように素直に従ったらどうですか」
『それは無理だ/無理な話ぞ』
「お二人共それはひどいです!!」


どうやら某知識ページがあるサイトを調べてみれば、七夕でお願い事を笹に飾るのはどうやら江戸に入ってかららしい。
勿論三人は知るわけもない。
新しいことに驚くのは無理もないかと少し苦笑を交える。


「今の日本には七夕にお願い事を笹に飾る風習があるんです」
「ほお…それは叶えるのは誰だ」

普段なら冷静に馬鹿らしいとか言いそうな元就さんでもどうやらこの手の他力本願な行事、嫌いじゃないらしい。
それがまた意外で面白く思える。


「まあぶっちゃけた話これはそうするっていう自分の覚悟を宣言するみたいなものらしいですね」
「じゃあ結局叶えるのは自分って訳か」
「世の中甘くないのはいつの時代 も変わりませんね〜」
「…期待させよって」


三人の中でなんだかんだ言って一番楽しみにしてたのかもしれない元就さん。
ちょっと悪いことしちゃったと反省する。その反面、また三人それぞれの新たな顔が見れたと満足感を覚える。


「毛利さん!今日晴れてるから星綺麗に見えるんだからそうしょげないでください」
「そうだぜ、現実が厳しいのは今に始まったことじゃねえ…っつうか俺アンタのおかげで厳しい気がするぜ」


二人のフォローで元就さんも元通りになったようなのでベランダに出て笹を固定して三人の短冊を吊るす。
三人のことだから元の世界に戻りたいとか書いてるんだろうか…そう思って少なからず寂しく感じながら見てみた。



ピンクの短冊に は『宵闇の羽の方に会いますように』

緑の短冊には『毛利家繁栄』

紫の短冊には『民の幸せ』


ああ、やっぱり遠い世界を生きてる。


「んで、アンタ何お願いしたんだ?」
「え、あ、私は妥当に健康とか、幸せとかですね」
「裏は?」
「へ、裏なんて書いてませんよ…あれ」


じゃあ三人は裏書いてるんだろうか、そう思って見てみれば『名前』と私の名前が書かれてるのが見えた。


『名前さんと一緒に笑っていられますように』

『名前の幸せ』

『名前の笑顔』



「ちょっと名前さん!?」

気づいたとき頬に涙が伝っていた。
でも、この短冊を見て泣かない方が無理だ。


「だって、だって…私のお願いなんて…」
「おいおい 名前、俺たちだってアンタのこと大好きなんだぜ?
 それぐらい願ったってバチは当たらねえだろ」
「元親さん…」


元親さん手が私の頭を撫でれば、元就さんがハンカチを持ってきてくれた。


「我とて感謝はしておる」
「元就さん…」


いつか三人は元の時代へ帰ってしまうのかもしれない。
だけど記憶は三人と私を繋ぐ。


「ありがとうございます!」


今はただ三人といられる時間を楽しもう、うん、楽しんだもん勝ち。


こっそりと織姫に向かって祈る。

『三人といい思い出が作れますように』

と。





もうありがとうございます!!!

何回読み返してもニヤケが止まりません(*´▽`*)

やっぱ瀬戸内トリオ好きです(笑)



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