場所は変わって病院。ここは、知り合い………というより、彼にとって尊敬している人の友が働いている病院なので信頼出来るところらしい。
 救急搬送だったが、ラッキーだ。







「やぁ、三成くん。まさかここに日菜くんがやってくるとは思わなかったよ」







 三成に話しかけた人、その人こそ彼が信頼出来る人物の竹中半兵衛だ。彼はこの病院で働いているドクターで、日菜の治療をする担当者だ。
 半兵衛は三成に今現在の日菜の状況を報告するために、待合室で待たされている三成の所にやってきたのだ。








「彼女の容態は君が心配するほどではないよ。止血してくれてたのが一番助かったところだね。呼吸も心拍も正常。命の心配はないよ」
「本当ですか……!ありがとうございます、半兵衛様!」
「様はいらないよ、三成くん。ただ、ね………」








 半兵衛の顔は曇った。考えるように手を顎に当てる。三成は半兵衛の様子を見て首を傾げた。







「…………日菜くんはどのように倒れたんだい?」
「頭から地面にかけて倒れました」
「それは後頭部を思いっきり打った状態でかい?」
「はい」








 半兵衛の顔は更に曇った。三成は、止血をしてくれた看護士の男の話を思い出した。



『記憶喪失する可能性が大きいです』



 まさかと思い、三成は恐る恐る口に出す。








「あの、半兵衛様……」
「なんだい?」
「もしかして………日菜は…記憶喪失になっておられるのですか………?」
「……………」








 半兵衛は眉間にシワを寄せながら三成をみる。眼鏡を一度取り、レンズを拭きながら彼は話す。







「三成くん、落ち着いて聞いてくれ。ただの記憶喪失ならいい。だが、彼女の場合、打ち所が悪かった。悪すぎた」
「え…………」
「普通の記憶喪失なら記憶は必然的にいつか出る。だが、彼女の場合、その可能性がないに等しい」







 聞くのがイヤになってくる。だが、聞き逃すまいと必死に嫌がるのを止める。半兵衛は眼鏡を掛け、続けて言葉を出す。







「彼女の頭はね内出血を起こしているんだ。手術を今すぐにでもしたいんだけど」
「してください!」
「……ふぅ。分かった。皆、緊急手術の用意をしてくれ」








 半兵衛が指示を出すと、看護士たちが動きだし準備を始めた。
 半兵衛も席を立ち、三成にまたここで待ってもらうように言った後に待合室から手術室に入っていく。







「三成くん」
「はいっ」
「僕も尽力を尽くすけど、覚悟はしておいてくれ。元の彼女になるには、相当な時間が掛かることをね」
「………はい」








 三成はしばらくの間、座らずにその場で立ち尽くしたのだった。





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