日菜と出会ったのは秀吉様たちが誘ってくれた飲み会のときだ。半兵衛様と一緒に付いてきたそれが出会いだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥
「ごめんね、変なこと言って」
「……?何の話だ」
「ハシビロコウの嘴」
「……………」
飲み会の帰りのこと。日菜が三成に改めて謝ろうと思い近づいた。
だが、「ハシビロコウの嘴」と聞いた瞬間に三成は少し気にしていたのか自らの前髪を見た。そんなに変わったものだろうか、と思っていれば日菜が声をかける。
「……やっぱ嫌だったよね…?」
「何がだ」
「ハシビロコウの嘴」
「…………これは変なのか?」
「変と言うより珍しいかも」
「何故だ。このようなもの珍しくもないだろう」
「いやぁ、そこまで鋭く見えるのは見たことないよ」
そう言ってまた三成の前髪を触る。またもよく分からない行為に苛立てた三成は日菜の手を払いのけた。
宴会は既に終わっており、三成と日菜は居酒屋の前にいた。先程の行動を日菜にされた三成は居酒屋を後にして帰路に行った。すると日菜も同じ方向に行くのでまたもや苛つき始めた三成は振り返って言う。
「何故貴様もついてくる」
「私もこっちだからだよ」
「知らん」
「そりゃさっき教えたもん」
三成は答えを聞かずに日菜を置いてさっさと歩いて行く。すると日菜も足早になるというのに三成の速度についていこうとした。
あまりにもしつこくついてくるので一度振り返ると、日菜は急に止まったせいで三成にぶつかる。
「わっ、ごめ──」
「貴様!私についてくるなと言っただろう!」
「だから同じ道なんだって……好きでついてきてるわけじゃ…」
「ならば何故私と同じ速度で来る!?その必要はないだろう!」
「こわーい。竹中先生に言いつけるぞー?」
「なっ……!!」
日菜の言動で三成は黙った。まさかの反応に日菜は「あれ……?」と小さく言って三成を見れば冷や汗をかいており、何故そのような反応をするのか分かりはしなかったが、何となく怒られるのを怖がっているように見えた。
「あの………大丈夫…?」
「……は………半兵衛様に……なんと伝えるのだ…」
「え?あ、いや、冗談……だよ?」
「なに?」
すると三成のオーラが急に怒りを表現してるように見えて日菜は何が起こったのか分からず、ピリピリとした空気に少し戸惑っていた。
「貴様ぁああああ!!!嘘を吐いて私と半兵衛様を騙すつもりだったのかあああ!!」
「えぇっ!?いや、そのっ、冗談通じるかなぁ……と思って言ってみただけでっ、別に騙すつもりはなかったよ!?だから落ち着こ!ねっ!?」
「知るかぁあああああ!!!!秀吉様、半兵衛様…!この者を斬滅する許可を私にいいいいい!!!」
「きゃあああああ!!!」
三成は周りの人にも見える赤いオーラを纏い、目を赤く光らせ鞄を武器代わりにと言わんばかりの構えで走った。その姿は……まるで黒光りするアレに似ていると誰もが思った。
日菜は全速力で三成に追い付かれないように家に向かうが、三成と家が同じ方向というのと三成は日菜に怒りを覚えたため、どうすることも出来なかった。
道行く人に目もくれず、日菜は一生懸命走るものの、どちらかと言えば運動部のような体力は持ち合わせておらず、ひたすらに無意識に走っていたため疲れていることに気付かないでいた。
「あっ……!」
とうとう足がもつれてまさに転けると思っていると、足が異常に早い三成が瞬間的に日菜を捕まえた。
いきなりの出来事で呆然としてしまったが、三成を見るやいな、とても恐ろしい形相で日菜を見ており日菜はビクついた。
そしてふいに横を向けば自分が住んでいるマンション。
「………あ、ここ。ここ私がすんでいるの」
「何?…何故貴様もここで住んでいる」
「え、その言い方………まさか…」
「私はこの建物に住んでいる」
日菜の顔は引きつり、何とも言えない雰囲気になったのだった。
今日出会った前髪がハシビロコウの人は自分と同じマンションに住んでました。
これが日菜と三成の出会いであり、1日目の出来事であった。
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