ある日、隣に家が出来た。

 その一週間後にトラックが一台、出来立ての家の前に止まって荷物が家の中に運ばれるのを自分の部屋の窓から覗いていた。
 何が楽しいでもなく、当時5歳だった名前には物珍しかった。ただそれだけで隣の家の部屋を覗いていた。
 大きな男の人が机や何かの箱を運ぶ度に何が入っているのだろうと頭の中で想像することもあった。


 どんな人が隣に来るのだろうか。


 気になって気になって仕方がなかった名前は作業が終わるまで見ていた。
 そして、作業が終わる頃には一台の車が家の中に入っていくのが見えた。駐車場という場所に止めたのだろう。名前はいつも父が車を止めるときに家の中にある駐車場という場所に入れているのを見るため、そう思ったのだ。


 すると、誰かがドアを開けたのが見えた。さっきの男の人たちならドアを開けると分かる身長だったのに対して、今度は見えなかったのだ。それもドアは開きっぱなし。ずっと観察していた名前はそれがさっきの人たちではないということを察した。
 では誰なのか?……もしかして、さっき車で来た人かな?名前は少し期待を胸にした。


 じっとただ見ていると、その部屋の窓からひょっこりと姿を現した。
 名前が見たのは、自分と同い年くらいの黒髪の男の子だったのだ。目が良い名前は、彼の目の色も見えており、目を疑うような金色の目だった。だが、妙に彼に似合っている目だと名前は思った。







「きれー……」







 名前と隣の家の窓は差ほど距離が遠くない。むしろ近い。小さな子供でも手を伸ばせば隣の窓に手を付けれるほどだ。
 だからなのか、名前が見ていたことをベットの上に上った瞬間、目がバッチリ合ってしまったのだ。途端に彼は窓の近くの壁に隠れた。


 誰なんだろう。僕をジッと見てる……


 そろりと壁から覗くが、未だに見ていた。すると、急に窓を開け、彼女は窓を叩いた。開けろと言っているのか、ずっと叩いていた。
 恐る恐る窓の鍵に手をかけ、窓を開けた。と、突然名前は彼の手を引っ張って無理矢理窓際に座らせた。








「おひっこししてきたの?」
「えっ……あ、うん」







 何をするかと思えばそんなことを聞いてきた。突然のことだったので少し慌てたが、彼は落ち着いて答えた。








「わたし、みょうじなまえっていうの」
「え………えと……」
「あなたのおなまえは?」








 何で急に自己紹介をするのか彼には分からなかったが、自分のことを真っ先に話しかけられたことに嬉しく思い答えようとする。すると、部屋の扉から声が聞こえてきた。








「政宗様、まずは近所の方に挨拶を………っま、政宗様!?何してらっしゃるんですか!!」









 扉から入ってきた男はとても低い声で、どこか威圧があり、政宗と呼ばれた彼と名前はビクリと自然と肩を震わせた。
 扉から入った彼は少年が窓際に座っていたものだから目を見開いて声を張り上げた。そんな怖いとしか印象がない声に恐怖を感じた名前は慌てて少年の手を離して部屋に入るなり、窓を閉めた。野生の本能というものだろう。

 急に離された手を伸ばして彼女に触れようとするも、それは叶わなかった。声を張り上げた本人は少年の腰を掴んでベットの上に置いた。







「政宗様!窓際に座るなど危険ですぞ!」
「………ごめん」








 ふてくさるように顔を俯いて政宗と呼ばれた少年は謝った。溜め息を付くも政宗の頭を撫でる。








「……隣の人の子なら今すぐ挨拶しに行きましょう。それから、さっきの子と遊びに行っても構いません」








 その言葉を聞くと「いいのか?」と返す。左頬に大きめの布の絆創膏を貼っている青年は不器用に笑って頷く。それを見た少年は顔色が明るくなった。







「サンキュ!こじゅーろー!なら今すぐいこーぜっ!!」
「御意にございます」








 嬉しそうに部屋を飛びだした姿を見て、こじゅーろーと呼ばれた青年は「あんなに明るい政宗様は久し振りに見た」と微笑み、部屋から出ていた。







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