三成夢長編「二度目の幸福論説」の夢主が語り部で名前無変換で出てきます。ご注意ください。















「───ということが昼頃にあってね」
「へぇ。で、先生は残業ってことですか」
「医者に残業なんてないよ。いや、残業なんて通常業務と変わりなくなったよ」
「ご愁傷様です」








 業務が終わり、帰ろうと思った矢先のこと。何故か竹中先生が事務室にやってきた。外はすっかり暗くなったが、先生がなかなか帰らせてくれない。どうしたのやら。







「先生、帰っていいですか?」
「日菜君だって気になるんじゃないかな?その子のこと」
「気にはなりますが、患者のプライバシーに関わるようなことはしたくないので」
「じゃあ君も来たらいいじゃないか」
「先生、話聞いてましたか?」
「これ終わったら飲みに行こうか」
「先生、私を怒らせたいようですか?」
「暴力はダメだよ、日菜君?」
「…………竹中先生、寂しいだけなんでは」
「僕は決して寂しくて誘っているのではないよ。これは日菜君にもこういう患者がいることをだね──」
「あー、もう、分かりましたよ。一緒に行きますから、一緒に行きますから!」







 あなたは本当に先生なのかと少し疑いますよ。

 あーあ、三成に怒られるなぁ……。










 場所は「1020号室」と書かれた病室の前。とうとう来ちゃったのです。先生に連れられてとはいえ、やっぱり気が引ける。興味半分で患者に接することは普通はダメだ。たとえ、どんなに珍しい患者でも。
 そんな常識的なことを知った上で私は今、竹中先生に連れてこられた。何を考えているのか私には全く分からない。……でも、何かしら先生なりの考えがあるということにしておこう。
 あ、今日の晩ご飯は何しよう。









「入るよー」








 2回ノックしたあとに先生はそう言った。


 窓辺の所に座っていたのは女の子だった。中学生くらいだろうか。夜の月に照らされて何だか格好良く見える。










「…………あぁ、アンタが医者か。たしかー……竹中だったか?」
「君は朝と昼の”彼女”じゃないね」
「あぁ、その通りだ。俺は”名前”であり、”名前”ではない。アンタらから見れば厄介者ってヤツか?」








 ハハッと笑う少女。だが、どこか男と思わされる動作がある。何なのだろうか。ただの男勝りなのだろうか。

 実に気になる少女だ。








「俺は名前がない。you see?」













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