戦闘が終わったのはそれから数十分経ったときだ。元親と名前の周りには不良たちが転がっており、何人も気絶していた。元親は服等がボロボロになっているものの、息切れはしておらず、手首を回したりしていた。

「けっ、こんなもんかよ。アンタの輩はよ」

 名前を立たせれば元親は砂川を睨み付けた。砂川は何も発することもなく、ただ立っていた。

「どーしたよ。俺一人で倒すなんざ思ってなかった顔か?」
「………」

 名前の横でにやっと笑ってる元親を見て若干ではあるが名前は肝を冷やした。そこから首を砂川の方に向ければ血の気が引いた。

「"西海の鬼"の名は伊達じゃないってことを実感したわ。だからと言って諦めるわけじゃないけどね」
「まだやるか?」

 すると砂川は首を横に振った。名前はそれを見て胸を撫で下ろすが、急に「名字名前」と呼ばれて少しビクッとしてしまった。

「今日はチカくんに免じて許してあげる。だけどチカくんは私のだからそこは勘違いしないでよね」
「え」
「俺はアンタのモノになんざならねぇよ」
「なっ……!?」

 顔を真っ赤にして砂川は元親を睨み付けるが、元親は顔をサッと反らす。

「……もういいわ。名字名前」
「な、なに?」

 すると砂川は名前に歩いて近付き耳元まで顔を近付ければ低い声でこう言った。

「もしあなたがチカくんのこと好きじゃないとしても、私はあなたのことは許さないから」
「んなっ……!?理不尽すぎやろ!」
「チカくんの目を奪っておいてそれはないわね」

 砂川は名前の耳元から離れれば二人に背を向けて歩いていった。元親が「何処に行くんだよ」と後ろから言えばふてぶてしく砂川は言う。

「帰るのよ。言っておくけど、あなたに謝ったりしないから」

 そういって彼女は足早に去っていった。元親は小言でなにかを言っていたが、名前には聞き取れなかった。
 だがやっと暴動が収まったことに名前は安心し、地面にへたりこんだ。砂浜の砂が入ろうがお構い無しだ。

「はぁぁ……やっと終わった…」
「おつかれ」
「うんー……ほんま疲れた……」

 こんなことに巻き込まれるなんて思わんかった、と溢せば苦笑した。人生色々とあると改めて実感する。が、反面もうこんなことにはならないで欲しいとも思う名前であった。
 ふと元親の方を見れば、彼も名前の横でしゃがみこみ、溜め息を1つ吐き出した。やはり彼も疲れたのだろう。傷になった腕をそっと無意識に手で触れば、元親は少し驚いてそれを見た。

「……あ」
「?」

 だがその行為をした名前自身が一番驚き、素早く触った手を離した。

「ごめん。勝手に触って」
「いや、別に構わねえけど」

 一時静かな時間が流れたが、名前が立ち上がったことによってそれはなくなった。名前は制服のスカートを数回叩いて足早にその場から逃げた。元親もその後を追いかけて荷物を持って走っていった。
 浜辺から車が通る道に出ていき、元親は名前の後ろからついていく。早く歩いてるはずなのにすぐ追い付かれ、また早く歩くがすぐに追い付かれ……繰り返しそれをやっていれば急に名前が立ち止まって元親の方を向く。

「ありがとう」
「は?」
「助けてくれてありがとう。でも良くよ。彼女さんにあとで謝ってな」
「やだよ。大体あいつだって謝らねえだろ。あともう彼女じゃねぇし」
「でも──」

 すると元親はいきなり声を張り上げ、頭を掻いた。まるで名前の言葉を遮るように。

「……謝るのは俺の方だ」
「え?」
「俺があんなこといったからアンタが巻き込まれたんだ。すまねぇ……」
「あんなことってどんなこと?」
「そっ、それは言えねぇ……と、とにかく名前に関することだけだ」

 少し赤面になりつつも答える元親。何せ彼女には「名前が好きだ」と言ったのだ。そんなことを名前に言えるわけがないと思い出しながらまた顔が熱くなった。
 ふと名前は疑問に思ってたことを口にしてみることにした。

「そういえばいつの間にか名前呼びになってへん?」
「え……………あ゛っ」

 元親自身、いつから名前呼びになったか気付かないでいた。常に心の中で呼んでいたのをバレてしまいそうな勢いで元親は慌てて言い訳をするも、回転してない頭で考えた言葉は単語を引っ張ってきて話してるようにしか聞こえない。
 そんな様子を見て名前は思わず大きな声で笑ってしまう。車が通ってるおかげであまり声が響かなかったのが幸いだったかもしれない。

「いいよ、私もいつの間にか関西弁使ってるし、関西弁使ってても伝わる?」
「お、おう。漫画とかでもよく聞くし、多少は」
「あー、漫画の関西弁はちょいと可笑しいとこあるからあんま意味ないで。発音とかも神戸と大阪じゃちょこっとちゃうねん」
「へぇ、そういうもんか?」
「そういうもん」

 また車が走る道を歩きながら二人で話す。前よりも気楽に話せるようになり、元親と名前は互いに楽しく話せて少し嬉しく思えた。
 すると、名前は元親の怪我をふと見て小さく「あっ」と声に出す。

「もう学校は終わったんだよね?」
「とっくにな」
「じゃあさ、ルミナリエが開催されてる場所に行かへん?」
「今からか?」
「怪我とかしてるし、そこの近くに沢山薬局屋あるからいこ!」
「いや、でも…」
「はよいこ!」

 そういうと名前は元親の手をとって走り出した。







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