「…………え」
「なーにその間抜けな顔。ちょーウケる!あははっ!」
「っ…………」

 砂川は荒く名前の髪を持っていた手を離せば名前は倒れ込んだ。するとどこからか不良の格好をした女子高生や男子高生たちが大勢出てきて3人を取り囲んだ。だが、砂川はその人たちの外側に行きながら名前に話す。

「そーそー、その顔よ。今まであたしの彼氏に気がある奴等を貶めるその顔!今のあなた、最低で最高の顔よ。よかったわね、フフッ」
「……さ、西海の鬼…………って何…」
「高知の学校にいたときの彼の威名よ。彼は高知にいたとき、本当に色んなもの壊してきたの。それは物であろうと人であろうと、ね?そんな人をあなたは今でも好きでいられるの?」
「……………」
「それでもあなたは彼を好いてあげれるの?」

 名前は彼女の言葉に対して自分に問い掛けた。彼女のいうことが本当なら長曾我部くんが転校する前の彼は本当の意味で『不良』だ。ならば目を眼帯で隠してるのはその怪我を隠すためのもの、そう考えればしっくりとくる。が、それでも名前の中でしっくりと来なかった。
 何故こうもしっくりと来ないのだろうか、考えれば考えるほど分からなかった。
 そうこう考えてる間に砂川は周りの不良たちに合図する。

「やって」

 その一言で彼らは動きだし、名前に襲い掛かる。ハッと気付いたときには既に遅く、もう何歩もいけば彼らは持ってる道具で殴りかかれる状態だった。名前は思わず頭を守ってうずくまる体勢にする。もう殴られる、そう思った瞬間に誰かが名前の前に来た。その時、何かの風圧により不良たちは吹き飛ばされた。
 何が起こったのか分からなかった名前は頭を起き上がらせて前にたっている人物の後ろ姿をみた。

「長曾我部………くん……?」

 元親だったのだ。彼が何をして不良たちを吹き飛ばしたのかは分からないが、名前を助けたのだ。

「………どいて、チカくん」
「どかねぇ」
「どいて!」
「何度も言わせんな、どかねぇっつってんだろ」

 元々が低い声なのに更に低い声でそれを言うため少し怖いと感じてしまう。彼は今怒っているのだと分かってしまう。

「もううんざりなんだよ。俺の目の前で誰かが殴られたりされてんのがよォ……」
「長曾我部くん、私大丈夫──」
「俺は!!」

 名前の言葉を遮り、張り裂けた声で主張する。

「俺は、もうアンタに従う気はねぇ!!……いや、誰にも従う気はサラサラねぇ!!」
「チカくん……」
「アンタのやり方は間違ってらぁ!何でここまでする必要がある!?何か理由があんのかよ?!」
「………うるさい…」
「こんなことし続けて何の得になる!そんなんじゃ、何時までたっても」
「うるさい……!」
「一人のまま、人生を終わらすことになるぞ!!」
「うるさーーーい!!!」

 その叫びで一瞬周りの空気が静けさを増す。砂川は肩で荒々しく息を吸い、元親たちの方へ睨み付ける。その目はまさに中身が出たような酷い目付きをしていた。

「チカくんはあたしのなの!!あたしのチカくんに触れられたらそりゃ誰だって嫌でしょ!?あたしだけを見てればそれでよかったのに、何でそこの女を見るわけ!?あたしという彼女がいるのに、どうしてそっちを見るのよ!!意味がわからないわ!」
「さ、砂川さ……」
「黙れ!!雌豚がぁ!!!」
「ひっ」

 圧倒的な圧力に腰が引いてしまう名前だが、元親は怖じけずに仁王立ちをしていた。いつもの彼とは違って見えて名前は場違いなことだとは分かっていてもカッコいいと思わざるを得なかった。

「もういいわ……あんたたち!チカくんもろとも殴ったりなんなりしなさい!」
「大事な彼氏さんじゃないのか?」
「もうどうだっていいのよ!さっさとやりなさい!」
「ならお言葉に甘えて……」

 不良たちは武器を構え直して、また襲い掛かる体勢に入った。また身震いする名前に元親が小さな声で安心しろと言う。

「こんぐらいの相手なら余裕だ」
「え、でも……」
「"西海の鬼"をなめたらいけねぇぜ?」

 そう言うと元親は名前の方に顔を向けてフッと笑いかけた。ふいにもまたその顔にときめいてしまうも、名前は首を振って我に返る。
 元親は一度深呼吸をしたあとに名前に忠告する。

「頭抱えて縮こまっててくれねぇか。下手したらアンタを傷つけちまう」
「わ、わかった…」

 名前が大人しく縮こまっていれば不良たちは武器を手に元親たちに襲いかかる。元親は制服を乱してネクタイを外せば一つ深呼吸をして目を瞑る。そしてまさに元親の頭上に一つの武器が振りかぶるその時に、元親は武器を払い除けて不良の一人を溝落ちに奥深く練り込むように拳をいれる。気絶した不良を手にすれば名前に降りかかるもう一人の不良に気絶したそれを投げ飛ばして名前に危害を加えまいと助ける。
 そのあとから2、3人来るも元親は的確に相手の溝落ちに膝や足等で入れていく。時には敵の武器を手にして首の後ろを叩いたりと、次々に敵を気絶させていく。

「こんなもんか……?武器に振り回されてるだけのただのチンピラだな。面白くねぇんだよ、もっと本気で来いや!」

 元親が挑発すれば不良たちは持っていた鈍器やらを捨て、懐に手を伸ばしてあるものを取り出す。
 それはナイフ。もしくはカッターだった。刃を思いきり出して元親を襲う。元親は目の色を変えずに、避けながら立ち向かいまた気絶させていく。だが鈍器等と違い、避けたとしても刃物が少しでも掠ればカッターシャツが少し破ける音がする。

「だから言ってんだよ。アンタらは武器に振り回されてるだけのただのチンピラだってよ。刃物に変わったところで変わらねえんだよ!!」

 ドカドカと鈍い音を立てるのを聞きながら名前は頭を抱えた状態のまま、その様子を見ていた。それを見るたびに自分も参戦出来ればと思うが、今の自分では足手まといになると分かってしまうため歯痒かった。







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