「………………」
「………どうしたの、政宗くん。そんなに泥だらけで」








 政宗が来たのは次の日の丁度昼時だった。その姿はまさに泥まみれ。特にバケツを持っている手の方は真っ黒だったのだ。しかし、何故かその真っ黒の手に持っているのは子供サイズのバケツ。可愛いことにそのバケツの色は青色で、その青によく似合うドラゴンが描かれている。皆がよく知る某アニメのようなドラゴンだ。








「なまえいますか!」
「え、名前なら部屋にいるけど」
「なまえとあそんでもいいですか!」
「今から?」









 元気な声で答えるが、そと顔は子供なりの真剣なものだった。そして、名前の問いに対して首が折れるのではないかと思うくらい勢いよく首を縦に振る。
 真剣な表情だったため、少し小走りで名前の母は名前を呼びに行った。







『こじゅーろー、やまに穴をつくってもくずれねーやり方ってあるか?』
『………?やま、ですか?』
『うん、すなのやま』
『はい、ありますが』
『おしえてくれ……ねーか?』








 家の奥の方からパタパタと足音が聞こえた。政宗はその音に気付き、唾を一つゴクリと飲む。






「まー、どったの?」
「こーえんいこ!」
「いまからごはんだよ───うわっ!」






 急に名前の手を引っ張ったため、名前は政宗の前に倒れ込むような形を取ってしまったが、政宗がちゃんと掴んでくれたおかげで玄関で倒れずに済んだ。
 だが、依然と政宗の顔は真剣なままだった。名前は政宗のその金色の両目に射抜かれるのではないかと思うくらい、名前の目はその目を見た。






「すぐおわるから、だから──」
「わかった。こーえん、行こ!」






 さっきの真剣な表情とはうって変わって、徐々に嬉しそうなものになっていき、2人はお昼ご飯を後にして公園に向かった。







 昨日同様に公園はとても静かなものだった。しかし、昨日と違っていたのは、砂場にないはずのものがそこにあったため、名前は目を見開いて驚いた。







「どうしておやまがあるの?」
「おれとこじゅーろーでつくった」







 政宗の方を振り向けば、どこか達成感を感じて鼻を鳴らしている政宗の姿があった。
 しかもその砂の山はちゃんと穴が開けられていたのだ。昨日まで出来なかった穴なのだ。







「どうやって穴つくったの?」
「こじゅーろーがな、みずをふくませてどろにしてからやまをつくって、穴をつくったらいいって言ってたからそうしたらできた!」
「すごーい!」







 名前は政宗に向かって小さな手でパチパチと拍手をした。政宗はまた「えっへん!」と威張るように手を腰に当てて、背を反らした。







「わたしもつくるぅ!」
「いいぜ!つくろーぜ!」







 お昼ご飯を食べてないせいでお腹が鳴っていることに気付かずに名前と政宗は完成した山の横にまた山を新しく作ろうとした。
 夕方になればそこには大きい山と小さくて歪な山が穴を開けてそこにあった。







「「おなかすいたー!!」」
「第一声がそれとは。遅かったねぇ。お昼ご飯を温め直すから政宗くんも食べて行ってね。………あ、2人とも手を洗ってねー」
「「もー洗ってるー!」」







 洗面所からは小さな子供2人が笑いながら手を洗っている声が響いてきたそうな、そんな2人の声を聞きながら名前の母は2人分のご飯を用意した。







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