3*4




 身体が重い

 瞼が重い

 しばらくここで寝ていたくなる








「───りさ──、とな──」







 我はどうしてこのようなことになっておるのだ?

 ………あぁ、そうだ。変に頭が割れそうになり、それで━━







「もと───……なり──」







 誰ぞ、我を呼ぶやつは







「おき───てくだ───」









「元就さん!!起きてください!」
「ッ!」








 ハッと目覚めればそこはコンクリートの部屋。元就はあれから気を失い、うつ伏せの状態で眠ってしまっていたのだ。







「………河野……が、何故……」
「あっ、気付きましたか?よかったですー!」








 ホッと胸をなで下ろす鶴。頭が朦朧とする中、状況を把握しようと起き上がろうとする。が、何かが乗っかっているかのように身体は重く、なかなか動かせなかった。







「………何が乗っかっているのだ」
「え、これ、元就さんのではないのですか?」








 そういって彼女は元就の上に乗っている”それ”を軽く持つと、元就の上半身は少し軽くなった。元就は鶴が持っている物に目を疑った。
 それは、輪の形をした刃なのだ。鶴が持っていなければ背中を刺さるのではないかと思うくらい手入れをされていた。もちろん、元就の物ではないと言う。








「ではこれは誰のでしょうか?」
「河野、それを離すでないぞ」
「え?何でですか?」
「我に傷がつく」
「あ、元就さんにですか」
「………言い方を改めよ」








 まるで元就ならいいじゃないか、と言うかの如くの言葉だったので元就は若干肝を冷やす。
 しかし、何故このようなものが元就の上にあったのかは元就自身も知らず、鶴にも分からなかった。
 元就は刃に気をつけながら徐々に身体を輪の刃から抜けていく。────やっとこ身体が輪の刃から抜け出した瞬間、元就は小さく息を吐き安堵する。








「して、河野よ。貴様はいつからここにいた」
「元就さんを起こす時からですよ。私、この屋敷に地下があることを知らなくて、それを知ってから自分の部屋から出たんです」
「何?何故だ。貴様は家主の娘であろうて。知らぬはずがなかろうが」
「私は小さい頃からずっと自分の部屋と皆でお食事する所以外の出入りは禁止されているんです。だから元就さんと海賊さんをこの家に呼んだときも私の部屋以外は行かなかったでしょ?………”あの後”の時以外は」
「………おかしな話よな」









 元就はその話を聞きながら考えるように聞いた。
 この家はおかしなことばかりだ。何故自分たちをこのような目に合わせようとするのか、何故家主の娘である鶴は自室と食事の部屋以外は”行かせない”ようにしていたのか。
 不可解な点はいくつもあるが、今はこの部屋から出ようと立とうする。自然に元就の近くに置いている輪が刃になっているそれを触る。


 すると、急にそれが光だし、元就の手首の周りにまとわりついた。あまりに急なことだったため、元就は目を見開いてそれをただみつめるしかなかった。鶴も驚いて手を口に当てながら、元就と同じく見つめるしかなかった。
 すっかり小さくなった光は相変わらず元就の手首の周りを覆う。小さくなるにつれて段々と姿を現した。








「………ブレスレット?」








 形はブレスレット状になり、緑と朱の紐の先に先程の刃がついていた。元就と鶴はどんな仕組みなのか気になってブレスレットを見たが、特に何もなく、ただのブレスレットになっていた。








「不思議な刃ですねぇ……」
「…………」








 この屋敷は不可思議がいっぱいだ。

 とりあえず、元就自身何もないので、部屋に出ようとした。







「海賊さんはこの部屋を出た左の道にいるようです」
「その”予言の力”は便利よな」
「………そうでも、ないですよ」








 悲しげな表情をする鶴だが、元就は無視し、部屋の扉に手をかけたその瞬間だった。
 大勢の人が扉に輪を描くように集まり、皆銃を持って元就達に向けてられた。








「撃て───」








 



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