番外編 ~毛利家とお茶会~












 まだ元親達が小学5年に上がったばっかりの頃、何度か毛利家と長曾我部家でお茶会で喫茶店に集まることがあった。たまにこのように元親達が学校に行っている間、休みさえ合えばお茶会が開かれているのだ。
 知り合った、と言えば”少し変な話”だが、これもまた運命なのかと割り切って話していれば出てくる出てくる昔話。



 元親と元就の両親は、過去の記憶がある。それも400年以上も前の過去の記憶だ。謂わば《輪廻転生》というもの。
 何故その記憶が彼らにあるのかは、彼ら自身も知らない。

 400年以上も前、彼らが生きていた時代は「戦国時代」。日本に戦が絶えなかったその時代の武将とその正室が今、ここにいた。









「いやぁ、毎回思うんだが何で記憶あるんだろうな。どうよ、弘(ひろ)」
「知らん。我が知りたいわ。あと弘と呼ぶな、国親(くにちか)」
「いいじゃねーかー!今ぐれぇは許してちょんまげ。あと今の俺の名前もそれじゃねぇゼーット!」
「ネタが古すぎるわ。あと”Z”と言いながら手をクロスさせるでない」








 弘と呼ばれた男はコーヒーを啜りながら国親と呼ぶ男に突っ込む。 だが、これは彼らの今の名前ではないらしい。

 弘と呼ばれた眼鏡を掛けた茶髪の男の名は毛利直弥。元就の父である。
 国親と呼ばれた逆立っている黒髪が印象的な男の名は長曾我部友和。元親の父である。
 そして、喫茶店の外にいる子供を連れている銀髪の方が友和の妻、律子。もう1人、髪の端だけを結っている黒髪が直弥の妻、郁(いくみ)である。

 









「そういやぁさ、子供の名前付けるときどう付けたよ」
「長男、興元(おきもと)は昔付けたときと同じよ。まぁ、昔とは随分容姿が違うが面影はあり、己と同じ豪酒は変わりないやつになったわ」
「ははっ、そうなのか。オッキーは元気か?」
「オッキーと呼ぶな、ハゲ」
「は、ハゲてねーし!!!」








 そう言って友和は慌てて髪を触り、「本当にハゲてねぇよな…?」と少し不安になりながら言う。ハゲと言った本人は優雅にコーヒーを啜る。








「………元就の時は、頭の中に名前が響いてきた。あれは不思議な体験だった」
「え、お前も?実は俺もなんだ」
「……………」
「いや………そんなジト目されても本当のことなんだが……」








 元就と元親は生まれた月は違えど同い年だ。2人の親はどちらも偶然頭の中に響いてきた名前を付けたらしい。
 直弥は少し考えたが、やはり偶然としか思えず深く考えないでおこうと思い、またコーヒーを啜る。









「俺ンとこさ、一番驚いたのは三成と家康が生まれたときなんだよ」
「ほう?………確かに前の元親の後の弟ではないな」
「あぁ、双子が産まれるとは思ってなかったから余計にさ」








 ははっ、と笑う友和。が、すぐにそれはなくなり、家康と三成が産まれた時のことを話す。







「俺と律子さ、双子が産まれる前から名前考えていたんだが、元親のように名前が響かなくてもの凄く悩んで、けど結局産まれた後にも名前決めれなかったんだ。
だけど、その時、元親を連れて来てた時だ」












 そん時の元親は昔と同じで姫若子のような感じで、大人しいやつだったんだが、このときに限っては嬉しそうに何かを言ったんだ。
 そりゃ、今の世では弟が出来るのは初めてなんだ。だから嬉しがる理由はそれでよかったんだと思う。

 だが、━━━━








『いえやす、みつなり、おかえり!』








 元親は彼らを見るやいなや、そう双子に語りかけた。

 いえやす、と言うと有名なのが戦国時代を終わらせた東照大権現・徳川家康だ。
 そして、みつなり、は戦国時代最後の大勝負の関ヶ原の戦いの時に徳川家康と合間見えた凶王三成・石田三成。
 この2人が一番有名ではないだろうか。


 歴史が好きなのと戦国時代に生きた者として、その2つの名前が元親の口から出るとは思わなかった。(といっても関ヶ原の戦いでは既に俺は死んでる身だったわけだが……)
 律子もそれに気付いて驚いていた。








「元親、どっちが”いえやす”なんだ?」
「こっち!みつなりこっち!」
「何でこっちが”いえやす”なんだ?」
「くろいかみ!」





 若干分かる程度しかない髪で判別したらしい。流石に字まで分からないだろ、と思っていたんだが本の影響で覚えたんだろうな。家康の「家」と三成の「三」だけ書いて唸っていたよ。(あ、流石に「三」は学校で覚えるか)
 しまいには俺に聞いて「”やす”と”なり”書いて!」と言ってきた。どうやら自分にも記憶あるから俺と律子も知っていると思ったんだろう。………まぁ、実際知っているんだが。








「こうか?」
「それ!”やす”むずかしぃ……」
「フフッ、そうねぇ」








 字を紙に書いてやったら「それ!」と言って笑った。元親がこんなに笑ったのはいつ振りだろうか、と思った。
 兄弟が出来るってやっぱすごいな、と改めて思ったよ。
















「━━━まぁそんなこんなで今の元親が出来上がりつつあるわけよ」
「…………国親」
「とぉーもかず、じゃ!」
「とぅおーもくぁーず、貴様は思わなかったのか?」
「ワザとだよな………?な?な?何、”とぅおーもくぁーず”って……」
「元親が《記憶を持っている》かもしれないということを」
「え?無視?マジで?………って、そういやそうだな」

 







 色々と直弥に聞きたいことはあった友和だが、元親が友和達と同じで《戦国時代の記憶を持っている》ことを言われて思い返す。
 もしそうなら辻褄は合うのだ。元親がもし、戦国時代の時に家康と三成に会っていて、その記憶から「家康、三成」と言ったのだとしたらそれは友和達が持っている《戦国時代の時の記憶》と一緒なのだ。







「…………ちょっと元親に聞いてみるわ」
「その時に何故聞かなかったのか我は知りたい」
「…………………」
「とうー!」
「とー!」
「おぉ、三成と家康!どうしたー?」







 「とう」とは父さんと呼びたいが、言えないために友和を呼ぶ家康と三成なりの「父さん」なのだ。







「だっこー!」
「だっこぉ」
「遊び疲れたそうよ」
「おーおー、2人同時か。よしっ、いいぞー!」








 よいしょー!と2人同時に持ち上げれば聞こえる笑い声。そんな様子を見るのは毛利夫妻であった。








「……………家帰ったら元就を抱っこするか」
「あの子にそんなことしたら心配されますよ?」
「…………」










帰宅後━━━




長曾我部家



「なぁ、元親」
「なんだ?親父」
「元親が双子の名前を決めたことを覚えているか?」
「…………?家康と三成の名前を付けたのは親父だろ?」
「覚えてないのか?」
「覚えているも何も、付けた覚えなんてねーぜ?」
「……………そうか。いや、実はな━━」
「あっ、おれ元就と鶴の字と遊ぶ約束してっから行くわ!行ってきまーす!」
「…………………行ってらっしゃい」






毛利家



「元就」
「はい」
「………………」
「………?手を広げてどうしました?」
「……………だっ━━」
「あ、父上。外行ってきます」
「━━こ、してあげ……」
「………ぷっ、あなた頑張って(笑)」








Uターンすっか?
こちらが嫌でしたら
目次に行け


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -