白黒《二色》




※死・血表現あり。苦手な方はブラウザバックしてください。























「こんなの………先見にはなかったです………こんなの………………!!」


 1人の武将が無残に地べたに横たわる。もう1人の武将が冷たい目でそれを見る。彼の血と地に横たわる人の血が、彼の体を濡らしていた。
 彼は武器を落とし、彼女を見る。徐々に近付くにつれ、彼女は恐る恐る後ろに引く。
 何が起こっているのかは彼女には分からない。ただ、分かるのは、戦ではないこと。兵も、策も、そこにはなく、ただただ殺されていること。



「やめてください……毛利さん………」




 何を考えているのかが読めない、地に横たわる彼の言葉が今になってわかる。だが、それは戦で戦っているときに思った言葉だ。戦でないこの場で、しかも兵も連れず、1人でここに来たのだ。本当の意味で何考えているのかが読めない。
 ましてや自分の先見の力がこんなことを伝えていない。今でもそのことを伝えにこない。予測不可能な状態なのだ。



「黒は消え、白は溶け込む」
「え………?」



 一瞬足を止めた途端に彼は彼女に向かって走り出し、彼女の首根っこを掴み、宙に浮かせた。



「あっ………っ」
「これで、我は、貴様らと同じように」




 彼の右手の握力が彼女の首を絞める。彼女はもがいたが、力無くぶら下がった。そして、彼の装束が白に染められた。
 彼は彼女を落とし、狂ったように笑いだす。



「これで!我は同等な存在よ!!貴様らだけが色を持つ目は消えた、消えたのだ!!そして、我は貴様と同じ白よ!小娘!!!」



 もはや何を言っているのか自分にもわからなくなってきた彼はただ笑った。嗤った。

 だが、どこか虚しくなり、彼は座り込み、虚空を叫んだ。






 彼の後ろに2人の影。彼が振り向くと、さっき手にかけたはずの2人がいた。だが、先程とは違い、色が殆どなかった。

 白と黒、彼の目に写るものと同じだった。
 だが、彼らは彼の服とは正反対の黒色。





「これで俺らは殺せないだろう?智将さんよぉ」




 そういって2人は武器を彼に向ける。彼はまたニヤリと笑い、武器を持つ。




「また貴様らを殺せば、貴様らと同じ色になれば、同じになるであろう?」
















 彼らと同じ色になりたかったのではない。

 我は彼らとただ、話したかっただけやも知れぬ。

 自分のことを理解できていぬなど、我らしからぬ

 ただ、素直に、彼らの言葉を鵜呑みにしては、我は…………









また、温もりを忘れられぬようになるのに怯えていただけの、人になるのが嫌だっただけぞ



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