short story

21gと華栞



果たしてそれは愛だったのか。
若気の至りで片付けられるほどの軽い感情であったか。
少なくとも彼ら自身とその身内はそう思ってはいなかっただろう。

綺麗な顔だろ?死んでるんだぜ。
映画やドラマでよく聞く水臭い台詞を涙混じりに本気で言いそうになった自分に苛立った。彼の死を認めようとしている、いや、彼の死を乗り越えようとしているのか。他人からどう見えているのだろうか。心底どうでもいいんだけど。イヌサフランの様な美しさに見惚れていたいだけだから。

人間、死ぬと21g軽くなるらしい。
それは眼鏡の重さか。
それはお前が流した涙か。
それとも俺が流した涙か。
俺に注いだ愛情か。
俺とお前の愛の重さか。
それにしては随分軽いのな。

希望を失った気がした。愛を手放されて空っぽになった自分の手を見つめれば涙も止まった。バカバカしい。軽ーい脆ーい心身だったなあと思う。アネモネみたい。

クロッカスの香りに包まれて、桜吹雪みたいな恋に落ちて、梅花みたいな淡い甘さに溺れて、桃源郷に攫われるの。
足掻いてもがいて暴れて阿片を吸って忘れるの。
そのためには…そうだね、どうしたらいいんだろ。そうだ、俺も死ねばいいのか。
真ちゃんみたいに21g軽くなればいいのか。

みんな泣いてくれるのかな、不安だなあ
宮地さんとか木村さんとか大坪さんとか妹ちゃんとか母さんとか父さんとかみんな真ちゃんが死んだ時の俺みたいにわんわん泣いてくれるのかな
じゃなきゃやだなぁ、なんか勿体無いっていうかなんというか。
なんなんだろ。はやくらくになりたい
早く楽になって無になって白に浄化されて蓮の花の眠りの如く紫陽花に嘲笑われてでもやっぱり痛くて苦しくて上手く眼も閉じれなくなって涙だけが零れて曼珠沙華の花弁に触れて弾けて夢に溶けていくんだ。吐息混じりの嗚咽の中の喘ぎ声。阿鼻叫喚。支離滅裂。断末魔。
はやくわたしのかおに菊と白百合をさして。







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