short story

世界の車窓から。



高尾に会える様な気がした。ふと、思い立って秀徳カラーのそして見飽きたほどの名前行きの電車に乗り込む。途中の駅で特快にまで乗り換えた。が、会えない。会いたい。会えない、絶対。

鳴りもしない携帯電話を握り締め、これがお前が視ていた風景なのかと車窓から映っては消える情景を目に焼き付けた。

暖かい車内と胎内に居る様な緩かな揺れのせいで不覚にも微睡み始めてしまった。
どこにいる、見えない、辿り着けない。このままひたすら前に進めば会えるだろうか。何処までも何処までも続く果てしない道程を歩んで行けばいつかお前と擦れ違えれるか。
もし擦れ違えたとてお前が俺に気付かなかったら、お前は俺の相棒として失格だ。鷹の目が肝心な時に役に立たなくてどうする。俺の様な凡人にはそんな何かに特化された才能などない。それに俺はお前を引き止められる自信もない。だから、必ず見付けてくれないと困る。
もし俺がお前の立場ならきっと俺はお前を見付けられないだろう。そして途方に暮れて赤ん坊のようにわんわん大泣きして野垂れ死ぬ。それでは死んでも死に切れん。

運命というものは残酷だ。俺はお前と同じ世界に立つことさえ許されていない。背伸びをしてまで見たかった景色を見たいのに。こんな悪夢とはおさらばだ。真っ暗闇で何も見えず一人で足掻く夢なんざ。
願いというのもは強く願えば願う程、遠ざかって行く気がしてならん。叶った願いなど一つもない。だから尊いのだろう?

ーただいま、4番線高尾行の列車にて人身事故が発生致しました。白い線の内側にお立ち下さい。繰り返します。ただいま、よnー

地獄に落ちたら救われる。天国昇ればまた会える。







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