short story

玄関パラノイア



誰かが家にいる事なんてない。いたら逆に怖いし。
誰かがドッペルしてたら困るもん。怖いでしょ。怖くないの?

でも実際それが実現して日常と化すのも相当怖いんだよ?
別に誰かがドッペルしてる訳じゃないけどさ。

俺だって高校生だし、仕事がなけりゃ帰る時間はそれほど遅くない。仕事が無い日は基本虚しい。
だって家に独りでいる時間が長くなる訳じゃん。寂しいよ。
両親はどこにいるかって?別居なんだよ。学校が神奈川だからさ、遠いんだよ。だから一人暮らし。
自分で選んだのに寂しいとか言ってんじゃねぇよ、って失礼な。
選んだけども望んだ事じゃないよ?

中学時代は普通に実家暮らしでみんなで一緒に帰ってたし。くろこっちの隣に歩いていつも帰ってた。
楽しかったなぁ、あの頃は。今の生活も十分楽しいんだけどね、なにか物足りないような気がするんだよね。
今なんて試合とかがない限り会う機会なんて無いから寂しいんだよ。
毎日会えたらいいのにな。

学校が終わる。部活する。帰路に着く。玄関の前に立つ。鍵を鍵穴に差し込む。ドアノブを捻る。
「お帰りなさい、黄瀬君」って玄関開けた瞬間くろこっちがそこに立ってたら、そりゃ玄関から飛び出て思いっきり自分の背後にあるドア叩き閉めるでしょ?
で、呼吸整えてからドア開けて入るでしょ?
「そんなに慌ててどうしたんですか、黄瀬君。びっくりしたじゃないですか。お帰りなさい」
いやいやいやいや。お帰りなさい、黄瀬君。じゃ無いよ。なにやってんのくろこっち。不法侵入で訴えるよ?
「ただいまっス!!」なんて言える程メンタル強くないよ、俺。

でもこんな日常俺が望んでた事じゃない。天国だよ、極楽浄土だよ。素直に喜ぼうぜ?
今日に限らず明日も明後日も来週も来月も来年もずーっとこんな日が続かないかなぁ〜。
案の定それが続く訳でして、不思議に思うスペースなんて脳内にない訳でして。
楽しい毎日スよ。楽しくて楽しくて幸せの塊でしかない。

よく注意して見ないと見えないのに、確かに感じる存在感。影が薄いなんて言わせない。
影はすごい濃い。まるでそこにいるみたいに。

そんな妄想を僕は毎日しています。







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -