認めるということ
走った。
走った。
無心に走った。
訳もわからず走った。
「これなんなんだよ!!!!」
ドアを開けると同時に叫ぶ。
右手に握りしめたプリントを、あらもう帰って来たの、と流す瞳子さんに突き出す。
「どうせマサキのことだから帰ってくるとは思っていたけれd「っざけんな!!!」巫山戯てなんていないわよ」といつも通り新聞越しに冷たく言われる。
「まぁまぁ、そんな怒らなくたっていいじゃないか」
「ヒ、ロトさん…なんでいるんですか?なんで貴方が今ここにいるんですか!?」
ほらまたタイミング悪い。のそのそと出てきやがって。ひどいなこの人。俺はどんだけついてないの!?
「だってここは僕の帰るべき場所、僕の家。そして僕がこの園を支えている。
今になって思うことではないだろう?」とあたり前のように答えた。
それに、と溜息をつきながら歩み寄るヒロトさんの顔は何故か怖くて。
「僕がマサキの保護者なんだから、マサキが帰ってくる場所が僕の居場所であって当然だろ?」
微笑みつつ、首を傾げながら言うな。腕組みまでして。
うぜぇ。
「…んで…か?なんでこういうことになったんですか…?誰が決めたんですか…?俺に…聞くとか…無かったんですかぁぁ!!!!」
あー、拳が痛い。壁に血がついちゃったじゃない。
「もちろん、ヒロト自らの決断よ。ねぇ?」
「当たり前だよ。マサキのこと、守ってあげたいし。マサキのこと好きだし。当然だよ。」
はぁ!?当然だと?なにがだよ。なにが"当たり前"なのか説明していただきたいのだが。結局ただの同情じゃないか。
それと好きってなんだよ、好きって。どういう意味だよ。ホモか?冗談じゃない。
にしても、親の成り済ましなら本当にやめて欲しい。
どうせまた棄てられる。どうせまた同じような思いをするんだろう。
ヒロトさんも、俺と同じような体験をしてるのは察してたよ。
余計なお世話だよ。涙が出るわ。
それとさ、俺の質問に答えろ。俺になぜ聞かなかった?きっと断るから?
何でだよ…ばかじゃねぇの
っとか、いろいろ考えてるうちにその場にしゃがみ込んで、また泣いて。
泣き疲れて。その場にへこたれて、嗚咽を吐きながら、目尻腫らして。
あー、泣くの疲れる。意識が朦朧として来た。
ほら、マサキ。と名前を呼ばれる。
もぉ、なんですかぁ…と見上げてみる。
部屋に行きなさい、と促される。
めんどっ…と立とうとするも、力が入らない。
あーまた泣きすぎた。
そこに立っている赤毛のメガネの名前を呼んでみる。
なんだい?早く立ちな、と手を差し出されるが、首を横に振るのが精一杯で。
ふと笑って、可愛いなマサキは、とかいろいろほざきながらお姫様抱っこで部屋に連行される始末に。
自業自得、なのかな。