long story

消えるということ



「友達はサッカーだけ」なんて一人になって
園の皆が寝静まった午前3時を狙う。


よっ、ほっ、とリフティングの練習をしていたこの日は強風だった。
いつものように暗かったが、いつも以上に寒気を憶えた。
時間が経つに連れて風は強くなって行く一方だった。まだ雨は降っていなかった。


ある時、強風が自分を煽った。目を固く瞑り、しゃがみ込めばボールは闇に消えていった。
ボールが自分の元から消えたことを認識すると俺の中の何かが切れた。
突然の雷雨と共に大声で俺は泣きじゃくり始めた。
自分の親とボールを重ねてしまったのだろうか。信頼していたものに見棄てられたと思ったのだろうか。考える余裕さえ与えてくれない雨は降り続けた。



「マサキ」

なんてタイミングの悪い人なんだろう。なんでここにいるのがあなたで俺の親ではないのか。
傘を差し出ししゃがみ込むあなたになんて抱き付きたくないのに。嫌いなのに。
俺は少し濡れたスーツにしがみ付き、顔を埋め、スーツがぐじょぐじょになるまで精一杯泣いた。


ヒロトさんは嫌い。だって優しくしてくれるんだもん。
泣いたら慰めるでしょ?いいことあったら褒めるでしょ?危ない時には助けるでしょ?
それって、親の仕事じゃないの?
俺にはもうそんな人はいないんだよ。要らないんだよ。
だからね、もう関わって欲しくないの。

俺が泣いた時に黙って撫でてくれた手が温かかったなんてもう思いたくないから。




来ないで。







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