memo
ご無沙汰しております。


欠乏症

なにかが違う
なにかが違うんだ

おかしい
声が出ない
おかしい
本当に声が出ない

歌えない

明日が見えない
昨日が眩んで仕方がない
今日が来なければよかった

意味を持たない言葉を吐き
寿命を縮めてまで息を吸う

馬鹿馬鹿しいオーディエンスと
おぞましいほどの拍手喝采の雨

望んでいた全てが掌から転げ落ちていく
膝が震えて仕方ない
指先がかじかんで
目の前が霞んで
マイクが持てない
ステージに立てない

涙も
声も
想いも
何も
出ない。

明日になれば治るかな。
明日になれば昨日に戻れるかな。
明日になれば、明日になれば、明日になれば。
明日になれば今日は死ぬ。
今日は昨日に変わり、明日は今日に変わる。

月が昇り日が沈む。
それを眺めたら声が戻るかな?
眠らない夜を越えて、暖かい色に包まれたら生きた心地が戻るかな?

太陽と月はいつでも対極にあって、自分と君もきっと平行線上で動いてる。
一生交わる事のないジレンマを抱えて私は声が枯れるまで歌いたかった。

眠たい
寝たい
眠ってしまいたい
眠ってしまってすべてを忘れたい

欲に塗れた夢は穢れて叶う事はない。
だが心は停まる事を知らない。
恐れ多き神との対話など、とうの昔に諦めた。
だから運命に従うのだ
たとえ明日に君がしねど
私が車に轢かれたとしても
地図に書き記された路が変わるわけではないんだよ。

テーブルの席に着いた。
コップをひっくり返した。
中身をぶちまけた。
布地に滲んでシミになった。
端からしたたる液体を眺めた。
冷たい、冷えきった、青い、青い、朝が来た。














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