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your charm - 00



私の記憶の中で、その男の子はよく泣いていた。痛いのかな、怖いのかな、悲しいのかな。そう思ったら私もつられて泣きそうになった。

そんな彼のために私ができることはただ一つ。元気になれそうな明るい色を選んで、その子の好きなものはわからなかったから私の好きなものを象って、正方形の紙をちまちまと折り畳んでいく。
しょーとくんが痛くありませんように。しょーとくんが怖くありませんように。しょーとくんが悲しみませんように。

一つ一つに想いを詰め込むように、たくさん心の中で呟いて。



――彼が、もう、泣きませんように。


最後に一番下を裏に折り返して、完成。
黄色い折り紙と薄橙色の折り紙を組み合わせて作る、なかなか複雑な作品。しかし幼い頃から何十回と作ってきた私にかかれば、もう慣れたものだ。ただし、一回折る毎に想いを込めて、ゆっくり作るのは忘れない。

黒いネームペンでキュキュッと目と鼻と特徴的な笑顔の口を描き込んでみる。
残念ながら私には絵心がないようで、実物とは似ても似つかない間抜けな顔になってしまった。我ながら苦笑するしかない。クラスに絵の上手な友達はいるのだけれど、こればかりは他の人にお願いできることじゃないしね。

机の上に、小さな赤色の袋と、それに合わせて結んだ白色の組紐を準備する。出来立ての顔折り紙は、そのままでは大きくて中に入らない。仕方がないと顔を真ん中で二つに折る。ピンと立った二本の黄色がちょうど重なる。

――なんだかちょっと痛そう、ごめんなさい。でも、彼を、守ってあげてね。

なんたって、あの子が憧れるナンバーワンヒーローだもの。きっと色んな怖いものから、あの男の子を守ってくれるに違いない。

赤色の袋の中に、顔半分に折りたたまれたオールマイトの折り紙を入れる。サイズはぴったり。
袋の上端に小さく穴を開けて、二重叶結びの紐を通した。裏で固結びにして、二本の紐の先を一つに結ぶ――完成。

出来上がったお守り袋を目の高さまで持ち上げてまじまじと確認。うん、うまくいった。

手芸屋さんで見つけた時に一目惚れした赤い布。上品な深みがあって、記憶の中の赤色によく似ている。ほんのりと梅の刺繍が施されていて、ライトの光に当てるとキラキラと可愛らしい花を浮かび上がらせた。
白い組紐には一本だけ薄水色の糸を使っている。数日前に思い立って、久しぶりに道具を引っ張り出して自作した甲斐があったというものだ。冷たいあの白を、うまく表現できたような気がする。

早速学校の通学鞄につけてみた。これで鞄についているお守りは四つめだ。全部私の手作りなので、神様が喧嘩するようなことはない。

――ごめんなさい。本当の持ち主のところに行かせてあげられなくて。

四つのお守りに向けて、少し申し訳なく思う。本当ならこれらは全て、私じゃなくてあの子のところに行くはずなのに。私の意気地がないばかりに、私の手元でなんの力もないアクセサリーになってしまっている。

ふと息をつく。今、あの子は、どうしているんだろう。よく泣いていた男の子、とても辛そうで見ていられなかった男の子。
綺麗な赤色の男の子、綺麗な白色の男の子。
三年ぶりに目にした彼は霜を下ろした半身を震わせていた。

――あの子が、寒くありませんように。



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