×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




非合理の花束 - 01



――さすがの私もほとほと愛想が尽きました!

久しぶりに二人揃って非番が被るというから、三ヶ月ぶりに一緒にお出かけしたかっただけ。デート。恋人なんだから当然でしょ?
最近話題の気になる映画、CMを見ながら『なんか生徒が話してた気がする』って消太さんも言っていたやつ。人気だからちゃんと取っとかなきゃと、ネットでチケットも買ってしまったというのに。

そりゃあ、雄英高校の教員もやって、プロヒーローの活動もやって、忙しいのは私だって重々承知している。ただいまと帰ってくる顔が、十割疲労感に塗り潰されていることも少なくない。
もう少し休ませてあげてくれてもいいのにと方々に不満はあり、でも市民のために生徒のために日々を費やす彼が好きだから、何も悪いことはない。

それはわかってるけど!

『あ?デート?勘弁してくれよ……最近睡眠足りてねーんだから……映画?チケットて……相手の都合聞く前に勝手に買うな、合理性の欠片もないな』

あからさまに面倒臭そうな顔をして、最後の方になると若干イライラした感じもひしひし伝わってきた。完全にデートに行く気もなければ、映画を観る気もないということですかそうですか。

合理性の欠片もない――その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かがぷちんっと切れたような予感がした。

「ま、また消太さんはそういうことばっかり……!」
「そもそもお前は普段から無駄が多すぎる」

家事の進め方とか物の置き場所とか、仕事のスケジュール管理とか友人との長電話とか――消太さんに指摘された私の『無駄』の数々は、もう耳にタコができるくらい聞かされている。あえて今言い直すことはしなかった――多分今日もお仕事で疲れているからだろう――が、言いたいことはわかる。

ええ、ええ!重々理解していますよ!

「そんなに合理的なのがお好きなら、私なんかと付き合うのやめたらいいでしょ――私だって愛想が尽きたわ、もう別れる!?」

勢いでヒステリックに叫んでしまった。自分でも一瞬何を言ったのだかわからなかったので言葉を反芻し、なんてことを口走ったのだろうと一瞬後悔した。別れる、なんて今まで一度も言ったことがない。まさか私の口からそんな言葉が……で、でもそんなことを言われる消太さんの方が悪いんだから!

その消太さんは、私の言葉に珍しく驚いた風で目を瞠った。ドライアイだからかすぐに瞬きしたし、同時にいつも通りの無表情に戻ったけれど。
じわじわと後悔と開き直りを繰り返す私を置いて、消太さんは少し黙り込んで何か考えていた。私を宥めすかす言葉だろうか、それとも反論の言葉だろうか――やがて彼が告げた言葉は、そのどちらでもなかった。

「……わかった、じゃあ別れよう。愛想の尽きた相手と一緒にいるなんてのは、お互い、合理的じゃない」



前<<|>>次

[1/6]

>>Dream
>>Top