私の個性が嫌い。誰にも好かれない、誰も好きになれない。私の個性が嫌いで仕方ない。
私の周りの人間、全員嫌い。大嫌い。私を蹴るお父さんも、私を閉じ込めるお母さんも、私を嘲笑う同級生も、全員嫌い。お前って弱っちいよなァ、ケタケタ笑う声が気持ち悪くて吐きそうだ。
訳がわからなくなってきた、私はどうしたらいいのかな。
――そうだ、ヒーローになろう。
きっと私の話を聞いて、その結論を理解してくれる人は少ないと思う。理解して欲しいなんて思わない、だってみんな嫌いだもの。
わからなくていいよ。私は私を変えたくて、だからヒーローになろうと思った。
ヒーローになったら、私の個性も好きになれるかもしれない。私の個性に価値が出るかもしれない。意義があるかもしれない。
私が生きていく意味、私が強くなってもいい理由。
私の個性は『肉体強化』――そういうことになった。
自分で学校に相談して、しばしの安寧を得た。大嫌いな両親の元から離れたら、私は私が生きやすいように、周囲の環境を変えることが案外容易だと気付いた。
私の周りの人間、全員嫌いだったけど、高校の時の知り合いは結構嫌いじゃなかったりする。うん、むしろ好きだったかも、多分。
うん、好きだったかも、大好きだったかも。
あなたのこと、愛したの。
――あーあ、ヴィランになっちゃった。
きっとここまでの話を聞いて、私の現状を理解してくれる人は少ないと思う。理解して欲しい、だってあなたのこと大好きだもの。
ねえ、わかってよ、私……多分、悲しかったんだよ。
「わからねえよ」
「……そっかぁ。でも残念、私、やっぱりあなたのこと大好き」
赤色の髪も白色の髪も素敵、可愛いと思う。黒い目も青い目も素敵、かっこいいと思う。白い肌も火傷跡も素敵、とってもとっても――可愛くてかっこよくて色っぽくて、悲しそうで痛そうで辛そうで、ときめいちゃう。
あ、やっぱりごめんなさい、あなたの髪も目も肌も、そんなに好きじゃないかも。
「――あなたのその表情、今まで見た中で一番素敵」
「……お前、本当に狂っちまったのか」
その表情。悲しそうで痛そうで辛そうな表情。
そんな顔で私を見るなんて、それは自殺行為だと思う。きっと警察から、私の個性のことは聞いているでしょ?
「違うと思う。私は最初から狂ってたんだと、あなたもそう思ったでしょ?」
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