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後ろ姿でわかること - 02



数分後のチャイムをもって授業は終了。相澤先生は時間ぴったりに授業を切り上げて、さっさと教室を出て行った。
授業が終わったら八百万にさっきのお礼言わなきゃと思ってたんだけど、声をかける前にさっと席を立って教室を出て行ってしまった。ノートを持って、相澤先生の名前を呼んでたから多分また質問だ。

肩を叩こうとした手が無駄になっちゃったので、うーんと特に意味なく腕を伸ばしてグーパーさせる。シャーペン握ってたら指疲れた。

「なにやってんだ?」

顔を上げたら峰田が椅子に座ったままきょとんとした顔でこっちを見ていた。

「お前今日はいつにも増してぼーっとしてんな!授業中も注意されてたし」
「……うーん?」

いつにも増して?そうかなぁ。まあ確かに、授業中に二回も注意されたのは珍しいかも。
次移動だぞ遅刻すんなよ、と声をかけてくれる峰田も結構いい奴だ。ことエロに関してなんかに取り憑かれてるだけ――

「……あ、そっか」
「どした?」
「お前ら移動しねーの?」

そうかそうか、なんで今日はこんなに注意されたのかわかった。っていうか、なんでこんなにぼーっとして、落ち着かないのかわかった。上鳴が不思議そうにしながら峰田の席にやってきたのもちょうどいい。


「八百万はオッパイ、とか君らが言ってたからだね」


俺がそう口にした途端、峰田と上鳴と、ついでに近くにいた緑谷と轟までギクって反応を見せた。
そして少し離れた場所からは、何人かの女子の冷えた視線がビシビシ。

「なっ!おま、なんで今更その話蒸し返すんだよ!」
「だめ?」
「だめに決まってんだろ!」

つかお前やっぱ話聞いてたんじゃん!と声を上げる上鳴。いや、聞いてないとは言ってないし……聞いてたとも言ってないか、そういえば。

「だから、気になっちゃって」
「え、何が!?このむっつりめ!」

うーん、いまいち何に怒られてるのかわからないけど。むっつりって俺のこと?んー、まあいいや。

「八百万はねー……すごい姿勢いいよ。背中ピンッて伸びてて、あと、腕もピンッてしてる。肌白くてー、でも髪の毛は真っ黒で綺麗。サラサラのフワフワ。動くとひょこひょこするの、結構面白い。頭いいし、ハキハキしてるのカッコよくて、でもすごい親切だよ。フォロー上手。そんでね――」

峰田と上鳴に八百万のいいところ教えてあげようと色々挙げてるのに、当の二人ときたら俺が喋ってるのを目を白黒させて見ているばかりでちゃんと聞いてるのかな。さっき俺がぼーっとしてたら笑ったくせに。
八百万にも笑われたなぁとちらり思い出した。

「笑うと、可愛いんだよ。八百万。すごく」

思い出して口にしたら、つられてちょっと笑っちゃうくらい、可愛い。

言いながらへらへら。向こうの方で麗日と芦戸がハイタッチしてきゃーっと騒いでるのを見つけた。何やってんだろ、あの子達。

「――あ、あの、夢野さん……?」

と。戸惑いがちな、珍しく弱々しい声色で、背後から名前を呼ばれた。

そちらを見ると、ノートを胸の前でぎゅーっと握りしめた八百万がいた。
顔を見上げるとなぜかびくりと肩を震わせる。ちょっと、頬が赤いように見える?

「八百万……戻ってたんだね」
「え、ええと、その……!」
「八百万にね、言いたいことあって」

ここを逃すとまた機会を逸しそうで、八百万の言葉を遮って立ち上がる。クラスの女子の中では一番背が高いけど、こうして前に立てば俺を見上げるようになるところも、ほら、女の子らしいと思う。

またきゃーっと声。さらに峰田と上鳴からオイオイまじかよ!と妙に焦ったような声。さっきから外野がうるさい。

えっと、何と言えばいいのかな。声をかけておきながら、しばし無言で八百万の目を見つめてしまう。
ほんのり赤い気がしただけの頬が、じわじわと色を濃くしていく。いつもキリッとしている黒い瞳はまん丸に見開かれていて、俺の顔を綺麗に映しているのまで観察できた。あ、またひとつ八百万の良いところが見つかった。目が綺麗。

「――俺ね、八百万のいろんなとこ、好きだよ」



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