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らしくないぜヒーロー! - 03



夢野は意外とすぐには反応しなかった。てっきりいつもの高い声で笑い、だから言ったじゃんバーカ、とでも言うと思ったのに。しばらく沈黙が続き、その間、夢野は珍しく真面目な表情で眉を軽くひそめていた。

「……ふーん」

やがて返ってきたのは拍子抜けするような呟きだった。それから俺を嘲るでもなく、低いトーンで続ける。

「んで?アンタ、どこのヒーロー科行くの」
「聞いてどうすんだよ……つか、行かないし」
「……はぁ?」

夢野は一拍おいて、思いっきり眉を寄せた。

「行かない?どういうことよ」
「普通科に、行くことにした」
「……はぁあ!?」

また、ひっくり返ったような声。今度は思いきり目を見開いて、夢野は一歩俺に詰め寄った。

「普通科ァ!?バッカじゃないの!?雄英ヒーロー科行くつったのアンタでしょ!!」

「――無駄だって言ったのはお前だろッ!!」

気づけばそう怒鳴っていた。夢野は突然の声にびくりと肩を震わせて、口を閉じる。そういえば結局、こいつにこうやって反論したことは今まで一度もなかった気がする。

ええい、知ったことか。どうせこれで最後なのだ。俺はついに、初めて彼女を睨みつけた。

「知ってたよ俺だって!ヒーローになれるのは選ばれた奴だけだ、そういう個性があって、そういう風に育ってきた奴だけだ!敵向きの個性だって、ずっと言われてきた俺なんかじゃ――結局お前みたいなのには勝てないってことは!!」

こんな個性に、身の丈に合わない夢にしがみついた結果、見事に誰もの予想通り、きっちりヒーロー科を落ちてきた。無駄なこと。夢野がいつも俺を揶揄した言葉が、結局は正しかったのだ――さすが、『誂え向き』の奴は違うよなァ。

「羨ましいよお前がさ!いつもバカみたいに笑って、バカみたいに過ごして、それなのに俺のこと軽々と超えていって……!人生楽そうでいいよなァ、俺なんかヒーローになれないって、見下しててもやっぱりお前が正しいんだもんな!」
「っ、撤回しなさいよ!!」

呆然と俺の言葉を聞いていた夢野が、やっと顔をしかめて叫んだ。
全部事実じゃないか。バカみたいにケラケラ笑ってるのも、それでも俺の届かないものを掴むのも、嫌な奴のくせに人生全部上手くいっているところも。

「――アンタがヒーローになれないって、撤回しなさいよ!!」

「……は?」

顔を赤くして続いた言葉に、今度呆然とさせられたのは俺だった。夢野は苛立たしげに俺を睨みつける。

「雄英のヒーロー科行って、トップヒーロー目指すんでしょ!?なんでそんなこと言ってんの、ホント心操って死ぬほどバカね!!絶対許さないから!」

高い声でキーキー怒鳴りながら、コートのポケットから引っ張り出した一枚のプリントを乱暴に開いた。見せつけるように俺の前に差し出して、こう続ける。

「――私にこんな期待させといて、普通科なんか絶対許さない!!」

『合格通知』『夢野夢子殿』『雄英高校サポート科に合格しましたことを通知します』――サポート科?

「アンタにはヒーローになってもらうからね!じゃないと私のいる意味ないでしょうが!」
「言ってる意味がわかんないんだけど……お前、俺がヒーローになれるなんて――」
「そっちこそ意味不明なこと言わないで!」

俺の言葉を遮って、夢野は赤い顔のままで声をあげた。

「――だ、だいたい!初めて会った時、心操は私のヒーローしてくれたじゃん!」



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