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ガイスト・ガール - 07



ウソの災害や事故ルーム、略して“USJ”。名の通りに様々なアトラクション――もとい、想定された事故・災害のシチュエーションが用意された演習場だ。
相澤とオールマイト、更にスペースヒーロー・13号も本日の担当教員となるそうだ。もっとも、オールマイトは遅刻らしいが。

強すぎる個性、使いようによって人を殺せる能力を、多くの人々を救うために使うこと。災害救助で大活躍する現役ヒーロー13号の言葉は、相応の重みと現実味をもって生徒達の心を打った。それこそがヒーロー、『溢れる理不尽に抗う者』。幽姫は両手を組んで目を輝かせた。

「13号先生かっこいいね〜」

誰ともなく呟いたつもりだったが、偶然隣に立っていた爆豪は彼女の言葉にピクリと眉を動かした。

「そんじゃ、まずは――」

相澤が訓練の開始を告げようとした時、悪意はやってきた。

ドームの屋根に並んだ電球が、パチパチと瞬いたので不思議に思った。生徒達がそれに気を取られたのと同時に、相澤が声を上げる。

「一かたまりになって、動くな!」

その固い声色に驚いた生徒の中で、あっと小さな悲鳴を聞いたのは爆豪だった。

「は、おいどうした」

爆豪の声で、近くにいた数人が振り返る。

「霊現さん?大丈夫?」
「頭痛か」
「あ、えっと、ちょっと……」

葉隠と常闇の心配の声に、険しい表情で額を抑える幽姫は歯切れ悪く答える。そうしながら視線をふらふらと前方に向けて、あれだ、と呟いた。

同時に生徒達も皆、相澤が何に反応したのか気づく。

「あれは――敵だ」

広場の真ん中に黒い霧が広がり、その中から何人もの姿が現れる。それが全て、敵だと。

13号に生徒を任せた相澤が、敵の軍団に単身向かっていった。電波も妨害されており、学校に連絡はつかない。
多人数の敵に対して、こちらはプロヒーロー二人と入学したてのひよっこ二十一人である。とにかく逃げるのが先決と、13号の指示で生徒達は出口に向かう。

「モタモタすんな、バカ!」
「う、うん、ごめんね……あっ」
「このっ……!」

爆豪は依然体調の悪いらしい幽姫を急かしたが、ふらふらとした足取りで駆け出した彼女は足を縺れさせてバランスを崩した。爆豪はそれにキッと顔をしかめ、幽姫が倒れる前にその細い腕をぐいと引いて抱き留めた。

「使えねえな、テメエは!」
「う……頭いたい……」

爆豪の暴言に言い返す余裕もないのか、幽姫はぐったりして呻くのみ。爆豪は大きく舌打ちして、自分より頭一つほど小柄な身体を抱きかかえたまま出口に向かって走った。

「――させませんよ」

しかし出口に向かう彼らの前に、あの黒い霧状の敵が立ちはだかった。

敵連合、と名乗ったそいつは、目的についてこう語る――平和の象徴、オールマイトを殺す、と。
その口ぶりから、今日この時間、オールマイトがヒーロー基礎学の演習のためにこのUSJを訪れることは知っていたようだ。ヒーロー養成の最高峰を襲うというのは一見無謀だが、やはりそれなりに周到な計画の下で動いているらしい。

――オールマイトを殺す?ふざけたことぬかしやがって。

爆豪は悠々と語る黒い敵を睨みつけた。その前に、ぶっ殺してやる。抱えていた幽姫を下ろすと、多少ふらつきながらも立てないほどではないようだ。
それを確認するとすぐ、爆豪は飛び出した。同時に切島も。13号の後ろから飛び出した二人は大きく腕を振るい、敵へと攻撃を繰り出した。

「その前に俺達にやられることは考えなかったか!?」

爆煙に覆われた敵に、切島が声をあげた。余裕ぶった態度、まさか生徒が攻撃するなど予想していなかっただろう。しかし、やったかと期待する間も無く、すぐ薄まった爆煙の向こうではやはり黒い霧が揺らめいた。

「危ない危ない……そう、生徒といえど優秀な金の卵。私の役目は――」

ゆらりと霧を展開する様子を見て、13号がどきなさい!と叫びブラックホールで対応しようとした。
が、一足遅い。

「あなた達を散らし……嬲り殺す!」

そして彼らは、敵の霧に覆われた。



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