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ガイスト・ガール - 63



ギリギリで滑り込んできた九人を含め、雄英高校1-Aのメンバーはなんとか全員一次選考を通過することができた。安堵と喜びを交わすのもそこそこに、二次選考の説明が始まった。
控え室のモニターが映し出した、先ほどまで混戦が行われていたフィールド。公安委員のアナウンスでそれに目を向けた直後、爆発と共にフィールド全体が一斉に崩壊した。ビルが倒壊し、地面はひび割れる。この設備にどれほどの経費をかけているのかもう想像もつかないが、とにかく広大なフィールドが一瞬で瓦礫の山と化した。

『この被災現場で、バイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

二次選考はヒーローの本業、救助の実力を見るらしい。仮免取得者として適切な活動が行えるかを採点され、合否が決まる。フィールドには老人や子どもも含めた一般人が散らばっていく。要救助者のプロなんていう仕事があるのは初めて知ったが、救助対象は彼らHUCの皆様のようだ。


十分間の休憩があって、これまた唐突に警報のベルが鳴り響いた。

『敵による大規模破壊が発生!道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ!』

試験のシナリオを、本番さながらの危機感を乗せてアナウンスされる。一次選考の時のホールと同じく、控え室の天井と壁が倒れて開いた。
爆豪が小さく爆発させた右の拳をパシリと左手に当てて気合いを入れるのを、幽姫は横目で見た。

『一人でも多くの命を救い出すこと!!――START!』

合図と同時に、爆豪は両腕から大きく爆発を起こして飛び出した。相変わらず、初動は誰にも負けていない。
幽姫も当然のようにその後を追うことにした。多くの生徒が都市部ゾーンに向かうのを見てか、爆豪はそこを過ぎて、崩れた山道の方へ向かっていく。他人の多いところは動き辛いのだろうし、救助数を稼ぐのにも人の少ない方へ向かうのは理にかなっている。

到着してみれば、先ほども一緒にいた切島と上鳴も爆豪についてきたらしい。今回も人手がいるのは確実なので、爆豪は彼らのように付き合ってくれる友人に感謝するべきである。
もちろん爆豪が素直にありがとうなんて言うわけも無いので、結局は今度もまた幽姫がフォローする形になったが。
さて肝心の要救助者の救出の方は。

「腕を怪我したの!」
「助けてくれ!痛い!」
「――うるせえ!!自分で助かれや!!」
『はああァ!?』

これに関しては、腕を抑えて歩み寄ってきた二人も、爆豪の隣にいた切島や上鳴も思わず声をあげた。幽姫も流石にこれは駄目だ、と頬が引きつる。

「自己流貫きすぎだろ!」
「すげえ大怪我してるかもしんねえだろ!!」

切島達の非難も気にせず、爆豪はチッと舌打ちをする。

「いや……我々の設定は救助優先度の低い軽傷者……」
「まさか……!それを瞬時に見抜き、我々に『自分で動け』と……!?」
「都合の良い解釈してくれてんぞ……」
「うーん……」

安全な場所にと切島と上鳴が降りていく。幽姫はそれを見ながら、爆豪に注意を促した。

「爆豪くん、言い方ってものがあるよ……」
「あ?実際あいつら動けてんだろ」

確かに、腕を怪我したとは言っていたが、被災した場所からここまで自力で歩いてきたし、足取りも確かだったのはきちんと確認していたのだろう。
やるべきことはやっているという点で、信用していないわけではない。が、あれではあまりにヒーローらしくない。

「それじゃあ誤解されちゃうよ。爆豪くんはちゃんとしてるんだから、言葉だけで悪く思われると、私見てて悲しくなるの」

爆豪は幽姫を見て顔をしかめただけだった。反論するような言葉はなかったので、幽姫はそれ以上は言わずに苦笑した。

「じゃあ、私、応急処置できるスペース開けておくから……終わったら要救助者探すの手伝いに行くね」
「……ああ」

そろそろ切島達が先ほどの要救助者を連れて戻ってくるだろう。ゴロゴロ転がっている岩やその欠片を退かして、腰を下ろせる場所はあって損はないだろう。その程度はゴローちゃんと幽姫の力だけで事足りる。
この場に救助に来たのは爆豪達だけでもないし、救助活動には迅速さが求められる。比較的一人で対応に当たれる爆豪は、この場に留まるより現状把握に向かった方が賢明だ。

幽姫の判断に同意したらしく、爆豪は一つ頷いてさっさと背を向け崖から降りていった。



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