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ガイスト・ガール - 40.5(蛇足)



個性強化の訓練――林間合宿二日目、起きぬけから早速の開始となった。
A組は既に始めている、と担任のブラドキングに連れられてやってきたB組の面々は、そこに広がる地獄絵図を見て心にヒビが入る音でも聞こえた気分だった。

単純に言えば、ひたすら個性を使いまくる訓練らしい。
個性を身体機能の一つと考えれば、呼吸器を付けて全速力で走り続けろと言っているようなものだ。これはまさに――地獄の特訓というやつだ。

ブラドキングが訓練の説明を続けるそこへ、ふわふわとやってきたA組の一人。最前列にいた物間は彼女の姿に思わず眉をひそめた。他のB組生徒達も少し驚いた様子を見せる。

「おはようございます、ブラド先生」
「おう、霊現か」
「……あ、物間くんいるの?」
「なんでわかんのさ」

つい反応を返してしまった――こんな不審者みたいなやつに。
その不審者じみた相手は、物間の問いかけに得意げな声で答えてみせた。

「ふふ、ゴローちゃんは物間くんのこと結構気に入ってるもの。すぐ教えてくれたよ」
「っていうか、何その格好……趣味?」
「うん?違うよ、訓練」

趣味とは。幽姫自身はよくわからなかったらしく言及しなかったが、物間の発言は隣にいた骨抜に小突いて注意された。

目元を完全に覆うアイマスクと、両手足首に長めの鎖がかかったプラスチック製の枷である。ヒーロー科の強化合宿のくせに、一見すればまるで逮捕された敵の図だ。明らかに異様である。
視界の奪われた状態でB組の面々や物間に気づいたということは、発言の通り、ゴローちゃんのサポートを受けているのだろう。

「視界の情報を幽霊に聞きながら、移動も幽霊にお願いして、ずっと個性を使い続けることで耐性と持久力をつける――っていう」
「へえ……」
「そういうのもアリなんですね」

物間は相変わらず不審げにしていたが、拳藤などは各個人に与えられる課題の幅広さを理解して目を瞬いた。
そんな生徒達に、ブラドキングは頷いて答える。

「通常であれば肉体の成長に合わせて行うが……」
「まァ、時間がないんでな。B組も早くしろ。んで、霊現サボるな」

その場に気だるげな足取りで現れたのはA組担任の相澤だった。物間と雑談をしている幽姫に気づいたらしい。
軽く注意を受けた幽姫はアイマスクの目を相澤の方に向け、口元だけでへらりと笑ってみせた。

「すみません、サボってたつもりはなかったんです。じゃあね、物間くん達も頑張ってね」

素直に相澤の注意を聞いて、幽姫はB組の生徒達に軽く挨拶を告げてその場を離れた。

手足の拘束では歩くのに支障があるのだろう、最低限地に足をつけないまま、ふわふわ跳ねるようにしてA組生徒達による地獄絵図に寄って行った。断然速度が遅いのは、前が見えないことに対する警戒のようだ。
雄英高校ヒーロー科の強化合宿、やはり楽しいだけではなさそうだ――B組の面々もA組に続いて、やっとそのことが身に染みた。



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