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ガイスト・ガール - 25



体育祭が終わって、二日間の休校日が明けた。
体育祭終了後に言っていた職場体験に行くにあたって、ある重要なヒーロー情報学の授業が行われていた。

「じゃ、そろそろ。出来た人から発表してね!」

ミッドナイトの号令で、一番に前に進み出たのは青山だった。出席番号一番である。

「行くよ……」

教壇に立った青山は、得意げにフリップを掲げた。

「輝きヒーロー“I can not stop twinkling.”!」
「短文!!そこはIをとって、can’tにした方が呼びやすい」
「じゃあ次私ね!“エイリアンクイーン”!!」
「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」
「ちぇー」

出席番号二番、芦戸の案は却下された。ノリのいい芦戸の性格は長所だが、この場合は完全にただの悪ノリだ。

もちろん、本日のA組は授業中に大喜利をしているわけではなかった。ヒーローにとって大切な、『ヒーロー名』の考案である。

「じゃあ次、私いいかしら」

続いたのは出席番号三番の蛙水だった。クラスメイトから不安と期待を勝手に抱かれながら、彼女が自身に付けたヒーロー名は。

「小学校の時から決めてたの。“フロッピー”」
「カワイイ!!親しみやすくて良いわ!!」
「フロッピー!」

やぁっと空気がそれらしくなった。

期待以上に良いネーミングセンスを披露した蛙水に続いて、それぞれ自身の名前や個性にかけたヒーロー名を発表していく。この時決めたヒーロー名が、将来プロになった時にも継続される場合が多いというのだから、これは重要な案件である。

万物ヒーロー・クリエティを発表して戻ってきた八百万は、自身の一つ後ろの席を見てそういえば彼女はまだ発表していないのでは、と気がついた。次々と発表を終えていく中、八百万はちらりと振り返って声をかけることにした。

「霊現さん、決まりました?」
「あ、クリエティだ〜」
「そういう悪ふざけはいりませんわっ」
「ふふ、ごめん」

考案はしたが、そんな風にからかわれるためのものじゃない。八百万がムッと顔をしかめたのを見て、幽姫はへらりと笑ってみせた。

「爆殺王!」
「そういうのはやめた方が良いわね」
「なんでだよ!!」

教壇では爆豪があっさり却下されていた。当然の話である。
クスクス笑う幽姫を目ざとく見つけたようで、爆豪はキレ気味に睨んできた。

「笑ってんじゃねえ幽霊女!テメエこそまだのくせに!」
「えー、私決まってるもの」
「じゃあ次は霊現さん発表する?」

ミッドナイトが言ったので、挙手はしていないが幽姫の順番が回ってきた。
絶対馬鹿にしてやる感の漂う爆豪の視線は無視して、教壇に立った幽姫がトンっとフリップを置いて読み上げた。

「“ゴロー”です」
「あら、それって確か、あなたの幽霊の名前じゃなかった?」

ミッドナイトが意外そうな声で言った。はい、とにっこり笑って頷いた幽姫はこう続けた。

「私の可愛いヒーローの名前です」

いつかゴローちゃんって呼ばれるのが夢です!と語る。相変わらず不思議なことを言うなあ、とクラスメイトの数人が内心呟いた。いやそれ、猫の幽霊の名前じゃん。
良いんじゃない、とミッドナイトからお墨付きをもらった幽姫は、そのまま自分の席に戻っていった。

正直笑ってやろうと思っていたのに、あの名前ではそんな気も起きない。爆豪は眉をひそめて、再考のためにフリップの文字を消し始めた。
それにしても、さっきから膝の上で見えない重さがかかったりかからなかったり忙しない。ゴローちゃんはどうやら爆豪の膝の上で飛び跳ねているらしい。喜びすぎだろ、自分の名前を使われたからって。



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