×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




ガイスト・ガール - 19



『残り一分を切って、現在轟ハチマキ四本所持!!ガン逃げヤロー緑谷から、一位の座をもぎ取ったぁ――!!』

プレゼント・マイクの実況でやっと現状を確認する余裕ができた。爆豪チームは足を固められて、多少距離が空いたはずである。他のチームメイトもそう考えたらしく、得点を映し出すスクリーンを見上げた。

『上位四チーム、このまま出揃っちまうか!?』
「二位か……ちょっと出来すぎかも。まあキープに専念だ」
「客うるせ〜」

物間と円場がそんなことを呟いたので、幽姫はパチリと瞬きを一つしてから口を開いた。

「まだ一分あるよ、気抜いちゃダメじゃない?」
「わかってるよ」

――本当にわかってるかなぁ。

幽姫はそう思いながら周囲を見回した。先ほど妨害を受けたB組の小大チームも振り切ったし、そもそも轟が起こしたのだろう氷の地面に縫い付けられたチームが多すぎて、警戒するべき相手はそう多くない。制限時間もあと一分足らず。

それでも、最後の最後まで勝利に執着する相手が、まだ残っている。それも物間によって最高に煽り立てられた状態の。

「――待てえええ!!待てって!!」

案の定。後ろから必死な声で叫んでいるのは切島の声だ。物間は呆れたため息をついた。

「しつこいなあ。その粘着質は、ヒーロー以前に人として――」
「勝手すなああ爆豪――!!」

振り返った先に、すでにいた。爆発によって一瞬で距離を詰めた爆豪を見て、物間が焦った声を上げる。

「円場!防壁!!」
「っしゃあ!!」

円場が個性『空気凝固』で形作った空気の壁。爆豪が円形の壁に阻まれたのを確認して、物間は視線を爆豪から白い靄の猫に向けた。

「ゴローちゃん!移動の補助――」
「物間くん、違う!」

幽姫の硬い声を聞いたと同時に、バリッと背後で音がした。
ガッと首元を強く引かれ、あっと思った時にはハチマキを二本手にした爆豪がテープに引っ張られて離れていく。

「取られた!二本!」
「物間くん、解除して!私がやる!」

幽姫の言葉に、パッと『霊媒』の個性を解除する。同時に白い靄の猫は視界から消える。
代わりのように、機に乗じた小大チームと角取チームが迫って来たのに気づいた。円場の『空気凝固』をコピーして、二つの壁が左右の彼らを阻んだ。

「ゴローちゃんっ」

幽姫が早口に名を呼ぶと、小大と角取の二チームが空気の壁に押し出されて、その場から遠くに弾き飛ばされた。残り時間で戻ってくることはないだろう。先ほど物間に『違う』と叫んだのは、こういうことだった。

「大丈夫だ、四位だ!」

スクリーンを確認した黒色が声を上げる。

「拳藤は凍らされて動けないから……」
「ああ……!この一本死守すれば、確実に――」

――そうじゃないんだってば。

幽姫はそう忠告しようとして、すぐ隣を通り過ぎて前方の地面に落ちた白いテープを見てハッとした。

――ほら、こういう相手だから。

振り返ればちょうど、芦戸の溶解液の道に乗って、爆豪が後方に腕を伸ばしていた。

ゴローちゃんを呼んで、突風で少しでも騎馬の位置をずらせば手が届かないだろうか。はたまた空気凝固の壁を自分たちにぶつけて弾いた方が確実だろうか。しかしバランスを崩せば確実に二撃目を受けてハチマキが取られる。

考える余地などないのに、とにかくなんとかしなければならないのに。
間に合わなかった。

『爆豪!!容赦なし――!!』

プレゼント・マイクの実況で気づいた。爆豪が空気の壁をものともせずに、幽姫達の最後の得点を奪い返したこと。

ほんの一瞬、爆豪と目が合った幽姫は、今になってもまだ何も諦めていない彼の赤目に気づいて――目を逸らせなかった。

「――次!!デクと轟んとこだ!!」

一切ブレずに一番を目指す、爆豪の性格はよくわかっているつもりだった。



前<<>>次

[20/74]

>>Geist/Girl
>>Top