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ガイスト・ガール - 18



すれ違いざま、B組の女子生徒が振り返って声をかけてきた。

「あんま煽んなよ物間!同じ土俵だぞ、それ」
「ああそうだね。ヒーローらしくないし……よく聞くもんね、恨みを買ってしまったヒーローが、敵に仕返しされるって話」

――物間くんって、他人を煽るの大得意なんだ。

幽姫はちらりと思い、爆豪達の様子を伺った。
フィジカルの強い切島、爆豪の機動性を高めるために配置された瀬呂の個性と、彼らに難なくついていける芦戸の運動神経。さすがに選り取り見取りでチームを組んだだけある、良い編成だ。

「もう手遅れだと思うな〜……」

彼らの上に立つ爆豪の顔。いつにも増して『凶悪』の一言に尽きる。幽姫には当然わかっている。
――煽りすぎてる。

緑谷に向いていた矛先が、刃を閃かせて物間に向けられた。そうなると爆豪は止められない。



爆発音を立てて伸ばした腕を、物間はトンと軽くいなした。
そしてすぐに振り返った爆豪は、目の前に伸ばされた掌に目を瞠る。嗅ぎ慣れたニトロの臭いに気づいたと同時に、ボンッ!と耳慣れた音。

「へえ、すごい!良い個性だね!」

感心したような声が煙に紛れる。そのまま流れるように切島の頭を叩いたのもわかった。

「俺の……!」
「爆豪おめーもダダ被りか!!」

――個性が被った?まさか、そんなことありえねえ。

首を振ってすぐに切り替えた爆豪は右腕を振り切って、物間に向けて大きな爆発を見舞う。

「――僕の方が、良いけどね」

それを防いだ物間の個性を見て、やっと合点がいった。前騎馬の切島はまた大声をあげる。そろそろうっせえ。

「んなああ!俺の!?また被っ――」
「違ぇ。こいつ、コピーしやがった」

一人が複数の個性を、それも爆豪と切島と相対してそれぞれと同じものを持ち合わせているなどありえない。相手の個性は『コピー』だ。触れた者の個性を自分のものにできる。正解、と笑った得意げな顔はやはりこちらを苛立たせる。

きっと睨みつけた時、横から邪魔が入った。見たことのない生徒――おそらくB組の奴――の個性で、騎馬の足元が白い糊でべっとりだ。

「固まった!すげえ!動けねえ!」
「ちょい待ち!私の個性で溶かすから……」
「早く!零ポイントだぞ!」

爆豪の騎馬を務める三人は途端に焦りを見せる。対する物間チームには被害がなかったようで、彼の騎馬を務める男子生徒が声をあげた。

「物間!あとは逃げ切るだけだ」
「このポイント数なら、確実に四位以内に入る!」
「そうだね――ゴローちゃん、頼むよ」

物間の呟いた名前にピクリと反応してしまう。

彼がどこか宙を見て声をかけると、その場にぶわりと突風が起きた。わっと周囲が目を閉じた一瞬の隙に、彼らの騎馬はその追い風に乗って二つのチームを置いて駆け出した。

「良い子だね、ゴローちゃん」
「そうでしょ?」

ちらりとこちらを振り返っていた幽姫が、騎手の声で前を向いた。見えずとも、愛猫のことを褒められた彼女がどんな表情をしているかなど、はっきりわかる。

――クソ、あの電波どもが!揃って懐柔されやがって……!

物間は足止めを食らったままの爆豪達を振り返った。得意げな笑顔。

「怒らないでね、煽ったのは君だろ?ホラ……宣誓で何て言ってたっけ?恥ずかしいやつ」

わざとらしくえーっと、なんて思い出すフリ。

――俺が一位になる。
――完膚無きまでの一位だ!邪魔されてたまるか!

「まあいいや、おつかれ!――彼女も得点も奪われて、残念だったね!」

――あんな野郎なんかに、獲られてたまるかッ!!



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