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ガイスト・ガール - 10



プロヒーロー達の登場を見て、死柄木と黒霧はワープでまんまと逃げ果せた。ヒーロー達がUSJ中に散らばって、生徒の保護と敵の捕縛に向かう姿の心強いこと。幽姫はやっと息をついた。

「……おい、幽霊女」
「あ、爆豪くん」

そんな幽姫に声をかけた爆豪は、顔をしかめて不機嫌そうだった。

「お疲れさま。大丈夫?怪我とか」
「うっせえ、テメエには言われたかねえよ」

はて。幽姫は首を傾げた。なんで自分は彼の安否確認をしてはいけないのだろうか。

「おーい!ゲートに集合だって!」

緑谷の様子を見に行ったはずの切島だったが、結局伝言を受けて帰ってきたらしい。よく見ればセメントスの出現させたコンクリートの壁に阻まれて、緑谷やオールマイトの姿は見えなかった。
彼らの安否も気になるところだが、伝言に従い、轟も含めたその場の四人で入場ゲートに向かうことにした。

爆豪から声をかけてきたというのに、結局彼の方の要件は特になく不機嫌な顔つきで前を歩くだけ。変なの、とその後ろ姿を見ていた幽姫だが、隣から声をかけられて目を離す。

「霊現、体調はもう平気なのか?」
「うん、問題ないよ。ありがとう轟くん」
「そうか……なんだ、大変だなそれも」
「ん〜、でもこんなにたくさん現れることって早々ないから、大したことないよ」
「それはそれで、耐性をつけるべきだろうが」
「こればっかりは、私一人でどうこうなる訓練じゃないしね」

「……お前ら、なんか仲良くなったか?来る途中はなんか険悪だったのに」

二人で会話を続ける轟と幽姫に驚いたらしく、切島が振り返って不思議そうに言った。その言葉に、対する二人は揃って小首を傾げた。

「険悪だったか?」
「そんなつもりはなかったけど〜」
「ああ、そう……ま、仲が良いのはいいことだ!」

切島はそれであっさり納得したらしく、うんと一つ頷くとまた前を向き直った。
爆豪は目線をひたすら前の地面に向けたまま、聞こえてきた会話に大きく舌打ちしただけだった。

*  *

生徒の安否確認や、警察による事情聴取、学校全体には1-Aの訓練実習での顛末が伝えられた。雄英高校始まって以来の大事件が起こった一日はようやく終わろうとしていた。明日は臨時休校だそうだ。

東の空が紫に暮れる頃、爆豪は相変わらず姿勢の悪い歩き方で玄関に向かっていた。さすがの彼でも、この半日の騒動で心身共に疲れは出ている。
そんな爆豪が自クラスの下駄箱前にて、バッチリ目が合った相手は、一瞬目を丸くしてからにこっと笑った。

「爆豪くんも、今帰り?」

よりによってこいつに会うか――爆豪はつい苦い顔をしてしまった。

USJから戻るバスの中でも、クラスメイト達がそれぞれ遭遇した敵の話をしあっている間も、爆豪は幽姫と会話していなかった。ゴローちゃんの付き添いは健在だったが、何を尋ねても無視する爆豪に首を傾げて、以降は幽姫も黙り込んでしまった。

そんな彼がここにきて反応を返すわけもなく。爆豪はさっさと自分の靴を取り替えた。
それを見ていた幽姫も肩をすくめて、半端に履いていた茶のローファーのつま先でトントンと軽く地面を蹴った。

「待って爆豪くん〜」

足早に玄関を出た爆豪の後を、幽姫は小走りでついてきた。歩調を緩めない爆豪と、諦める様子のない幽姫。

門に続く石畳が終わった時、やっと爆豪は振り返って彼女を睨んだ。

「ついてくんな」
「駅まで一緒でしょ?」

爆豪が立ち止まったおかげで追いついた幽姫は、隣に並んで見せてへらっと笑った。それに、と続ける。

「ゴローちゃん、爆豪くんのことさらに気に入っちゃったみたい」

その言葉に、爆豪は余計に眉間のシワを深くした。

いつもの台詞だというのに、一体何が彼の気に障ったのだろう。幽姫は小さく首を傾げた。



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