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Time3
***
『す、すいやせんっした…』
「もう鈴乃ったらそんな気にしないで!」
「まぁ惜しかったっちゃ惜しかったな。」
油断した自分の凡ミスのせいであと一歩のとこで反対側の手を上げてしまい、どんよりしてしまう私を二人が励ましてくれる。
〈ルッカの発明がもう完成したよ。広場をずうっと奥へ行った所だよ。〉
ふとそんな声が聞こえ、わらわらと広場の奥へ向かう人が見えた。
「ほら、いつまでもへこたれてねーで行くぞ。鈴乃。」
『ん』
「ふふっ、鈴乃ってばよっぽど悔しかったんだね!」
「ん…?おや?ちょいと、そこのお前さん達」
ふと声をかけられ、振り返るとそこには変な形の帽子をかぶり、丸いサングラスをかけたおっさんがいた。
なにこの典型的な変質者。
めっちゃ怪しい人だわ。
「そこの娘のつけているペンダント…。」
「?これのこと?」
「あぁそれじゃ。まさか…いやまさかな…。」
ブツブツと独り言を言うおっさんに余計危ないオーラを感じる。
「そのペンダント、わしに売ってくれんかの?」
「えぇっ?!」
『げぇっやっぱ怪しい人じゃん!この人絶対裏社会とかでやり取りしてるよ!』
「ほっほっほ。お嬢さん、中々面白いことを言うの。」
くっそwwwちょっと嫌味なつもりで言ったのに笑ってやがるwwww
「はは。試しにはいどーぞ、って渡してみるか?」
『何言ってんのクロノ!これはマールの大事なペンダントでしょ!冗談でもそんなこと言っちゃダメだよ!』
「えぇ!さっき二回も返そうとしなかったお前がそれを言うのかよ!」
「どうじゃ、値ははるぞ?」
『あ、どーぞどーぞ。』
「「鈴乃!」」
『へ、へーへー…分かってますって。冗談だっつに。』
二人の息ピッタリな注意に少し驚きながらおっさんに渡しかけていたペンダントをマールに返した。
べっ別にお金に目がくらんだとかそんなんじゃないんだからっ!
「ふむ…、残念じゃな。ところでおぬしらこの刀かじボッシュの作った剣でも買って行かんか?」
あ、ボッシュって言うんだ。
「どうするクロノ?買うの?」
「うーん…いや、今はそんな必要ないからいいや。」
「そうかい。ワシゃ東の大陸にすんどる。何かの時は立ち寄るがよい。」
そう広場の奥へと向かう私達に言ってくれた。
なんだ、案外いい人だったんだね。
***
そして広場の奥の階段の前まで来た私達。
ここを上がったらあの発明品があるんだよね。
そしてクロノの愛しのお・さ・な・な・じ・み・も・☆
『うへへ…楽しみ!さ、行こ!』
「?おう。」
「待って!!キャンディ買っていくわ!」
マールが階段の横にあったキャンディショップの方へ行ったの見て、私も欲しくなった。
『私もー!』
うわぁ…いっぱいある!
ピンク色のペロペロキャンディに、オレンジ色のハート型キャンディ。
たくさんの色のキャンディがあり、虹色できれいだった。
「おいーまだー?」
『待ってよクロノー。』
「そうよ。たくさんあって悩んでるの!」
「はいはい。ったく…どうせ俺が払うんだろ。」
「どれにしようかなぁ…。鈴乃決めた?」
『まだー。ん〜迷うー!』
「ほんとほんと。どれも美味しそうだし。」
マールと二人でキャンディを選ぶのは、なんだか学校の友達と放課後ショッピングを楽しむ感じがして、ウキウキした。
キャンディなんて買うの、何年ぶりだろう…。
「どんだけ時間かかってんだよー。置いてくぞー!」
『そんな急がなくたって幼馴染と発明品は逃げないって。』
「そうだよ。人さらいじゃあるまいしそんな急いで連れてこうとしなくても。…あっ!私これにする!おばさん、これちょうだい!」
『んー…じゃあ私これ!』
「あいよ。」
おばさんからそれぞれのキャンディを受け取った。
マールはクマの形をしたオレンジ味の可愛いキャンディ、私はリーネの鐘をイメージしたようなベル型のストロベリー味のキャンディを選んだ。
美味しそう…!
『また後で食ーべよっと。』
私は制服のポケットにそのキャンディを入れた。
そういえば格好は登校の時のまんまなんだ…。
ま、そりゃそっか。
『お待たせクロノ。行こっか!』
「やっとかよ…」
そうして今度こそ私達はきっとこのお祭りの目玉とも言えるであろうクロノの幼馴染の発明品を見に、階段を上がって行った。