3-1

Time3





「いったー……」


『いってて…』


「ゴ、ゴメンなさい!大丈夫?」


『う、うん大丈夫!私こそごめんね…!』



勢いよく尻もちをついてしまい、腰をさすって立ち上がると、ぶつかった女の子が申し訳なさそうに謝ってきた。

この子、可愛いな…。



「おい鈴乃、大丈夫かよ?」


『あぁクロノ。うん、大丈夫大丈夫。それよりあの子は…』


「ア、アラ? ペンダントが……。た、大変!なくしちゃったのかしら?」



すでに立ち上がっている女の子を見ると、どうも様子がおかしい。

少し焦ったように地面をキョロキョロと見渡している。



『あの…何か落としたの?良かったら探すの手伝おうか?』


「えっ本当?!ありがとう!実はさっきぶつかった衝動でペンダントを落としちゃったみたいなの。青い石がついてるペンダントなんだけど…」



そう言ってまたキョロキョロと探し出す女の子。



『青い石のついたペンダントね…どこだろう…』



さっきのぶつかった衝動で落ちたならそんな遠くまでは飛んでないはずだよね。



「お、あったぞ!ペンダントってこれだろ?」



クロノがチャリ…と一つのペンダントらしきものを拾い上げた。

あ、本当だ。青い石みたいなのがついてる。



クロノが拾い上げたペンダントを見るなり、その女の子はパアッと笑顔になって駆け寄った。



「ありがとう!!そのペンダント私のよ。古ぼけてるけどとっても大事な物なの。
返してくれる?」


いいえ


「え」


「はぁ?お前何言って…」


「え、えーっと…か、返してくれるよね?」


いいえ


「そ、そんなぁ…」


「おい鈴乃、何で返してやらないんだよ。」


『え?いやだってこういう選択肢の時にいいえを選ぶのはRPGの基本だし…


何を馬鹿なこと言ってんだ。ほらさっさと返してやれ。」



ば、馬鹿なこととはなんだ馬鹿なこととは!
はいorいいえの選択肢でいいえを選ぶのはRPGの基本中の基本だぞ!

そんな私の心の声が聞こえたのかクロノが睨んでくるのでしぶしぶ女の子にペンダントを返した。

ほんの冗談だって言うのに…ってブツブツ言いながらその子に渡していると苦笑いされてしまった。

あ、こりゃ引かれたわ。





「私、お祭り見に来たんだ。ねえ、あなた達この町の人でしょ?一人じゃ面白くないもん。一緒に回ろうよ!いいでしょ?ね、ね?」



ペンダントを丁寧に掛け直すと、女の子は楽しそうに私達を誘ってきた。

この町の人ってフレンドリーだな。


ふっ…ここで“いいえ”を選ぶと思ったそこのあなた!
ブッブー!

ここで断る鈴乃ちゃんではないのです!
こんな可愛い女の子とお祭りを回ってきゃっきゃうふふできる夢のような申し出を断る人がどこにおるものか!!ばかもん!!


てわけで



『もっちろん!人数は多い方が楽しいもんね!ね?クロノ!』


「え、別に俺は…」


ね?クロノ!


「…あ、あぁ、そうだな、はは…」


「わーい、やったーッ!あ、名前言ってなかったね。私はマールって言うの。あなた達は?」



快くOKした私達に(クロノはやや強引だったが気にしない)また花のようににっこり笑って自己紹介したマール。

めんこい子やでぇ…


可愛い女の子を前に一人でうはうはしていたらクロノにどつかれた。痛い。



『私は鈴乃っていうの。よろしくね、マール!』


「俺はクロノだ。よろしくな!」


「鈴乃にクロノか、二人ともいい名前だね!よろしくね、鈴乃、クロノ!さ、早く行こう!」





こうしてまた一人、この世界でのお友達ができたのだった。



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