せめて、今だけは。
“姉弟”
この言葉に、今までどんなに苦しめられたことだろう。
本を読んでいる途中だったのか、テーブルの上で自分の腕を枕に寝てしまった姉さんの後ろ姿を見つめながら、ふとそう考えた。
小さい頃、たった一人の姉さんを守れなかった悔しみ。後悔。
力も勇気もなかった当時の俺は、何の抵抗もできなかった。
それ以来俺は姉さんを守ることのできる強い男だけを目指し続けた。
ただ強くなりたくて…。
ただ守りたくて…。
いつからか、その思いが
“一人の男として姉さんを守りたい”
という思いに変わっていったんだ。
その気持ちにブレーキがかからず、強くなるためならば例え魔王にだって…という馬鹿な考えさえ気付かずに。
だがこうしてまた姉さんの元へと帰ってくることができた。
昔の自分よりも遥かに強くなって帰ってきたのだ。
だが姉さんの周りには既に強い奴らが沢山いた。
また、一人になったように感じた。
俺が今までしてきたことは何だったんだって。
姉さんを守るどころか、結局俺が助けられているではないか。
それなのに、まるで幼い時のように接してくれる姉さんは本当に昔のままで。
もしも…
もしも俺達が“姉弟”じゃなかったら。
そう考える時だってあった。
今でも時々考える時がある。
「無理だって、分かってるのにな……」
分かってはいるのに…
「ん……テリー…」
突然自分の名前が呼ばれ、びっくりした。
「姉さん…?」
起きたのかと思い、少し近づいて顔を覗き込むと姉さんは目を閉じたままスヤスヤと規則正しい寝息をたてていた。
「なんだ、寝言か…。」
俺の夢でも見ているのだろうか。
その夢では姉さんをちゃんと守れる強い俺であるだろうか。
その夢でも、俺は“弟”のままなのだろうか。
「…テリー……大好きよ…」
その言葉にハッとする。
幼い頃よく繋いだその手に、自分の手を重ね、ポツリと呟いた。
「俺もだよ……ミレーユ…」
俺の口からは呼ぶことのできない、姉の名前を今だけなら言える。
すると、姉さんは安心したように目を閉じたまま小さく微笑んだ。
今だけは、“姉弟”という壁を、忘れさせてほしい。
俺の、たった一人の姉…たった一人の大切な女性、ミレーユ…。
せめて、今だけは。
END
あとがき
ホナ様との相互記念ということで、テリーとミレーユのCP小説を、とのリクエストでございました。
ど、どうなんでしょうかね、これ…。
CP小説は初だったんですが…!
テリミレとなるとついついシリアスモードを考えてしまうんですよね…(>_<)
いやぁ、この二人には幸せになってほしいものです。
と、まぁさておきまた完成が遅れましたが、ホナ様、この度は相互ありがとうございました!
これからも宜しくお願いします!
このお話はホナ様のみお持ち帰りOKです。
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