一日シンデレラ。


***





『はぁ……』




読んでいた本をパタンと閉じ、静かに溜息を落とす。


すると、近くで剣を磨いていたローレが手を止めて私に目を向けた。



ローレ「どうしたんだ?溜息なんかついて。」


『え?聞こえてた?』


ローレ「あぁ、バッチリな。悩み事があるなら聞くけど。」


『ううん、悩みとかじゃないんだ。ただね、この本を読んだらお姫様って素敵だなぁって思っちゃって。』




あるお姫様が一人の王子様と恋に落ちる。
しかし二人の関係は周りから反対され、会うことを禁じられていた。

そんなある日、二人はお城を抜け出しお忍びデートをする。
タイムリミットは夜の12時。

楽しい時間はすぐに過ぎるもので、あっという間に時計の針は約束の時間を指していた。


二人はもう二度と会わないことを誓った。
お互い相手のことを想い、大切にするが故の選択である。


お互いの幸せを願って…。





ローレ「おーい。戻ってこーい。」


『Σハッ…!!』



ローレの声に我に返った。
物語を思い出してるとつい…。

あのお話は、どこか切なくてハッピーエンドとは言えないかもしれないけど、私のお気に入りの本だ。



ローレ「お姫様、ねぇ…。そんな憧れるもんなのか?」


『そりゃまぁね。女の子ですから。少なくとも私は一度でもいいから綺麗なドレス着て、素敵な王子様にエスコートしてもらいたいって思うよ。』


ローレ「ふぅん…。」



あれ、やっぱ男の子には興味が無い話だったかな?
軽い相槌を打つローレを見て、私はそう感じた。



ローレ「ちょっと出掛けてくる。愛花はここで待ってろよ。3分で戻るから。」


『へ?分かった。行ってらっしゃい』



そう言うと、ローレは部屋を出て行った。






***





ガチャッ



『あ、ローレおかえりー。凄いね、3分ぴったりだよ!』


笑っている私の前に一つの包みが渡された。



『?何これ?』


ローレ「自分の部屋に行って開けろ。俺はここで待ってるから準備ができたら来いよ。」



何だかよく分からないけど、とりあえず私は部屋に行くことにした。






***





『ろ、ローレさん…。あの、』


ローレ「やっと着替えた、の…か…」



私の声にローレが振り返った。
少し驚いた表情で、言葉の語尾が遅れていた。


『これ…あの、えと。わざわざ買って来てくれたの?』


ローレ「あ、あぁ。その…お前がお姫様に憧れてるとか言うから、さ。えっと…似合っt」


アレフ「うわぁ!愛花、それ光のドレス!?すっごい似合ってるよ!」


アルス「本当だ!愛花、とっても綺麗!本物のお姫様みたいだね。」


レック「よっしゃここはレイドック王子である俺の出番だな。愛花をエスコートしてやる!」



ローレを遮り、次々と集まって来た。



『あ、ありがとう。』


嬉しいんだけどそんな面と向かって言われると、ね。


その時、ローレが私の腕を引っ張った。




『うわっ』


ローレ「俺が愛花をエスコートする。俺だってローレシアの王子だ。ちなみにこのドレスを買って来たのも俺だ。ほら行くぞ。」


『へ!?』


ローレは私の返事を待たずに外へと連れ出した。




***

がやがやとした街中へとやってきた私達。
既に外は夕暮れ時だったが、大きな街なので十分賑わっていた。



『大丈夫かな、皆のことほっといて…』


何か色々後ろで叫んでたけど。



ローレ「大丈夫だろ。それともお前はあいつらにエスコートされたかった…?」


ローレが少し悲しそうに聞いてくる。
そんなつぶらな瞳で見ないでくれ…!



『う゛…ロ、ローレが良かったです…。』


ローレ「ふっ…よくできました。」


『なっ…!騙したなローレ!さっきの子犬のようなローレはいずこに!』




キーキー言ってる私の前にひざまずき、そっと私の手を取った。




ローレ「僕と、デートしていただけませんか?…愛花様。」



最後にはフワリだかキラキラだか何だかそんな効果音が付いてしまいそうな素敵な笑顔で私を見事にノックアウトしてくれた。

これが王子スマイルと言うべきものか。


とにかくいつもよりも何倍もかっこいいローレを前に、私は



『はい…』



と頷くこと他なかった。





***



ローレ「ほら、ここ付いてる。」


『え?どこ?』



只今ローレと二人でアイスを食べてる愛花です。


ローレ「ここ。」


『…!?』


ローレが口元に付いていたらしいアイスを指で取り、そのまま食べた。


『た、食べ…っ…た、』


ローレ「?」


なんでこういうことサラッと…!
本人は全く気にしてないし!


何だろう…見た目はいつもの青い人(←失礼)なのにいつもよりキラキラして見える。



『ろ、ローレ!つ、次あのお店行こう!』


ローレ「はいはい。ったく…うちのお姫様は元気だな。」


そうだ。
この人は青い人(←失礼)
この人は青い人(←失礼)
この人は青い人(←失礼)

私はふるふると頭を振って、さっきの考えを掻き消す様にずんずんと歩いて行った。






***





よ、予想以上に楽しんでしまった…!

あの後いちいち素敵にエスコートしてくれるローレにドキドキしながらも、すっかりとデート(?)に夢中になった私。


辺りは真っ暗で、噴水の近くにある時計はもうすぐ12時を知らせそうだ。



ローレ「すっかり暗くなったな。そろそろ帰るか。」



ローレが星を見上げながら呟いた。



なぜかその姿に切なさを覚える。

そういえばあのお話も夜の12時でさよならだったな…。


王子様がお姫様を連れ出して楽しくデートして…何もかもがストーリー通りのせいか、別に今世の別れじゃないはずなのに寂しくなった。



『うん、そうだね。帰ろっか。』


ローレ「あ、そうだ。出る前にあいつらに遮られて言えなかったけど…そのドレス、愛花に似合ってる。」



これまた王子スマイルで。
私の心が持たないよ。


だけどなぜか切なさの方が勝って、上手く笑えなかった。



ローレ「何浮かない顔してんだよ。」


『ううん。何でもない。ただ、もう少しローレと一緒に居たかったな、って。』



噴水の流れる水音が私達の間で静かに響く。




ローレ「俺さ、魔法使えないじゃん?」



『え?え、と…うん?』


頷いていいのかこれ!?


その前に何故今それを!?




ローレ「でもさ、実は一つだけ魔法が使えるんだ。」




『え…、』







その瞬間、月の光に照らされた私達の影が静かに重なった──。







ローレ「これで、俺はいつまでも愛花だけの王子だ。俺にはタイムリミットなんかない。」






そんなの…魔法なんかなくったって私もローレだけのお姫様だよ…。




でもそれを言葉でなんて絶対言えないから、今度は私が魔法をかけよう。






そう思い、私はそっと背伸びをした…。








END




あとがき


何ぞこれ(^q^)

凛様、リクエストして頂いてかなりが経ちますが今更ながらうpしました。

何だか毎度のようなセリフですが、こんな遅れたくせしてなんと言う低クオリティなんでしょうかね全く。


もう一度言いますが何ぞこれ


恥ずかしいにも程があるぜ管理人。
何だよ魔法てwwプークスクスだろwww

あ、照れ隠しなんでお気になさらず。


とにかくリクエストして下さった凛様、ここまで読んで下さった方ありがとうございました!


このお話は凛様のみお持ち帰りOKです。


 

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