novel


▼ プロローグのプロローグ




これは、とある少女の冒険へのプロローグ。

…よりも少し前のプロローグ。





***






キーンコーンカーンコーン…





『やっと授業終わったー…!お昼だーっ!』



4時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴り響き、教室にいる生徒達はがやがやと動き始める。


ほんとお腹空いたー。



「玲香ー、お弁当食べよ!」


『うん!もうお腹ペコペコー』


「ほんとほんと。私2時間目からお腹空いててさー、いつか音が鳴りそうでビクビクしてたよ。」


『あははっ。さすがに2時間目からは早過ぎでしょ!でも静かな時に限ってお腹鳴っちゃうんだよね〜』



椅子を移動させながら一つの机に集まり、いつも一緒に食べている友達と他愛ない会話をする。

この瞬間が学校生活の中で一番幸せかもしれない。


なんてことを思いながら二人でお弁当の蓋をパカッと開ける。



「うっわぁ…これまた…うん。もう何も言いますまい。」


『ちょ、ちょっと何それ!失礼!これでも頑張ったのにー…』


最近、毎朝自分のお弁当を作り始めた私のそれを見て、引きつった笑顔をした友達。
そ、そりゃ料理そんな得意な訳じゃないし見栄えはそんなよくないけどさ…!



「あははっ、はいはい。個性的でとっても頑張った感が伝わってよろしい!」


個性的って何だよ。いいし!別に料理できなくても将来家庭的な男の人と結婚しちゃえば問題ないもんねー。』


そう意地を張ってみると、友達は急にニヤニヤし始めた。


『な、何…?キモいよ?


あんただって十分失礼だよ。ってそうじゃなくて!玲香、そろそろ彼氏とか欲しくないわけ?」


『か、かか彼氏?!な、何を言い出すの!』


突然かつ何だか恥ずかしい話題に思わずどもってしまった。


「で、どうなの?」


『ど、どうって言われても…その…そりゃちょっとは憧れるけど好きな人自体いないっていうか…まだいいかな、っていうか…』


友達の恋バナは大好きなのだが、自分の恋バナにはあまり慣れてないのでだんだん声が小さくなっていく。

それを見かねてか、その子ははぁーっとため息をつく。


「玲香ってばいつも人の恋を応援してばっかじゃん!たまには自分のことも考えな。あっほら田邊とかどうよ。あいつ多分あんたに気があるよ。」


そう言われて同じクラスの田邊くんの方を見る。
田邊くんはバスケ部のレギュラーで、背が高く割と女の子から人気の男の子だ。

こないだ何故か私にオススメのゲームというのを説明してくれたが、あんまりゲームをしない私にとって興味のある話ではなかった。

何だったかな…ドラ…ドラゴン…ゴンドラ?ゴンドラクエストみたいなやつ。

最近新作やリメイクが出たんだーって男子達が騒いでいたのを思い出す。




「あの…笹本さんいる?」



ふいに名前を呼ばれ、声のした教室のドアの方を見た。
するとそこには隣のクラスの男の子が立っていて…誰だっけな…あ、前川くんだ!


「きょ、今日の放課後、俺校舎裏の木のとこで待ってるから、もし時間あったら来て!じゃ!」


それだけ伝えて、前川くんは走って自分の教室の方へと去って行った。


「おぉ〜?これは告白ってやつじゃないですかぁ〜?玲香可愛いからねぇ…。前川くんって料理もできるしそこそこイケメンだしOKしちゃえば?」


『も、もう!からかわないでよ。多分委員会かなんかの用事でしょ。』


いやそれならそこで言うでしょ





キーンコーンカーンコーン…




『あっもうお昼休み終わっちゃった…』


「うげー…次の授業古典じゃーん。絶対寝るわ。」




椅子を元に戻し、次の授業の準備をする。



『あっ、今日私日直だった…。放課後時間取れないかもなぁ…』



満腹感と昼間のぽかぽかした丁度いい気温に眠気を誘われながら、ふと思い出すのだった。






***





そんな毎日が続くと思っていた。

だけどその日の帰り道、新たな冒険が始まるだなんて、ウトウトしかけていたその頃の私は考えもしなかっただろう。





END






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