恋人の夜 1/2
「……」
今日ももうすぐ終わるな…。
俺はルイーダの酒場のバルコニーで上を見上げた。満天の星が暗闇の夜空を照らしている。
今日は2月14日……人間界ではバレンタインと呼ばれる日。仲間の話によれば、バレンタインは女が好きな男にチョコレートをあげて、好意を示すという日らしい…。
だが、俺は名前からチョコレートを貰っていない。
名前は、俺が初めて好意を持った女性。そして今は恋人として付き合っている。
……だが、今日は一体なんなんだ!?仲間たちにはあの太陽のような笑顔を振り撒きながらチョコレートを渡して、なぜ俺だけには渡さなかったんだ!!
それを聞こうとしたら、名前は俺から逃げるようにして、姿を消してしまった。
……俺、なんか悪いことしたか……?
疑問と不安は募るばかりで、深くため息をついた。
そろそろ部屋にもどろうかと思い始めた頃。
『…ナイン』
突然、愛しい声が鼓膜を震わせた。
慌てて振り返ると、そこには愛しい恋人、名前がいた。
「……なんだ?」
昼のこともあり、俺は少し不機嫌そうに聞いた。
すると、名前は泣きそうな顔をして呟くように話をはじめた。
『昼のことは本当にごめんなさい。ナインにはとっておきを食べてもらいたくて……』
………え?
『でもなかなかうまく出来なくて、こんなに遅くなっちゃって……』
すると、名前は後ろ手に持っていたものをスッと俺に差し出した。
ピンクの箱に可愛らしい赤いリボンが巻かれている。
『遅くなってごめんなさい……良かったらその……食べて下さい』
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