第6章
第6章
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…眠れない。
疲れてるはずなのに、さっきのが頭から離れないのだ。
何度か寝返りをうってみたものの、一向に眠れそうにない。
『ダメだ…。一回外の空気でも吸って来よう。』
そう思い、私はテントの外に出た。
するとそこには意外な人物がいた。
ソロだ…。
ソロは木ににもたれ掛かるようにして立ち、空を見上げて何かを考え込んでいる。
今はそっとしておこう。
それに今話しても、気まずくなるだけだし…。
そう考えて、音を立てずにもう一度テントに戻ろうとした。
…が。
運悪く木の枝を踏んでしまい、バキッという嫌な音が響いた。
あちゃー…
やっちまった。
ソロ「誰だ…!?」
仕方ない…。
『私です。ごめんね、外の空気吸ってさっさと戻ろうとしたんだけど…』
ソロ「何だあんたか。…別に謝らなくていい。眠れないのか?」
『うん。何か混乱しちゃって…。』
その時、ソロがぽつりと呟いた。
ソロ「勇者…か。」
“勇者"。
その一つの単語で、ソロがどんなに苦しい思いをしているか、ソロのせつなそうな声色や目によって、充分伺えた。
ソロ「狙いは勇者だけだったはずなのに、なぜ村まで滅ぼす必要があった…?」
ソロ「俺があの時もう少し強ければこんなことには…ッ!!」
ダンッ!!とソロが側の木を殴る。
その瞬間、私はソロがこの間のリュカと重なって見えた。
――…あの時自分がもう少し強ければ…――
あの時のリュカも、こんな風に自分を責めてた。
ソロ「…何のために俺は小さい頃から鍛えてきたんだ…ッ!!!」
私は耐え切れなくなり、思わずソロを抱きしめた。
ソロ「…っ…!?」
『そんな風に自分ばっかり責めないで…。責めたって今の状況が変わる訳でもない…。それに第一村の皆はそんなこと望んでないはずだよ…?』
ソロは黙っている。
『小さい頃から鍛えてきたのなら、それは村のピンチを救うためじゃない…ソロ自信のためだよ。』
『いつでもソロのことを思ってくれた村の人達の気持ちを受け継いで、前に進まなきゃ…。』
あーぁ…。
また言ってしまった…。
リュカの時だけでなく、ここでも偉そうなことを…。
でも少しは伝わったかな…?
するとソロはゆっくり私の背中に腕を回し、抱きしめ返した。
『…え…?』
ソロ「そうだよな…。何言ってんだろ…。危うく皆の思いを無駄にするところだった。」
ソロ「あんたのおかげで目が覚めた。」