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第32章




レント「結局リュカと会わなかったな。」

『そうだね。すれ違いになることもないだろうし…。』

エイト「何話してるんだろうね。」


あれから結構時間が経っているというのに、学生寮から校舎までの間でリュカの姿は見なかった。
それだけ大切な話ってことなのかな。
それなら仕方ないけど、やっぱ気になるなぁ…。


ローレ「なぁまだ魔法習えないのか?」

『意気込んでるねローレ。』

レック「でもたしかに次はどこへ行ったらいいんだろうな。」

アレフ「何にも知らされてないしね。」


*「…おっ!いたいた!おーい!」


突然呼ばれ、自分たちのことかと思って思わず振り返る。
すると男の人がこっちに走ってくるのが見えた。
あの格好は多分先生だろうな。校舎で何人か見かけた大人の人は大抵こんな服装だったし。


*「お前たち、今日来た新入生だよな?」

ナイン「あ、はい。そうです。」

*「ふぅ…やっと見つけたぜ…。俺はガザール。この学院で剣を教えてるんだ。」

レント「へぇー!じゃあ強いんだなお前!」

エイト「レント敬語」


目を輝かせながら普通にタメ口で教師に語りかけるレントを、エイトが肘でつついた。

だがそんなレントの態度にも怒ることなく、ははっと笑うガザール先生。


ガザール「そりゃ強くなけりゃ剣の教師なんて務まんねえよ。…ま、ここで立ち話してる暇もないし歩きながら話すぞ。」


足早に歩き出すガザール先生に、私たちも小走りでついて行く。
その間に先生が色々と説明してくれた。

ガザール先生は私たちが入ることになるクラスの担任の先生。
この時期に新入生が入るのは珍しく、クラスメイトたちは私たちが来るのを楽しみにしてくれているらしい。

それで今向かっているのは、その教室というわけだ。

転校経験なんてないし、こんな時どうしたらいいんだろう。普通に自己紹介するだけでいいんだよね?
う〜…緊張する…!

たまに本とかで転校してくる主人公がいるけど、こんな気持ちなのかな。

いつの間にか着いた教室のドアの前で、ドキドキする胸を抑えながら深呼吸をする。
するとそんな私を見兼ねたのか、ふいに誰かに頭を撫でられた。
びっくりして私が顔を上げると、エイトの優しい笑顔に視線がぶつかる。


エイト「そんなに緊張しなくても大丈夫。僕がついてるよ。」

『エイト…』

レント「コラそこ!!いちゃつくな!」


レントに注意され、私たちは思わず目を合わせてくすっと笑う。
なんだか少し気が紛れたみたい。


ガザール「よーし、準備はいいか?俺に続いてそのまま教室に入ってくれ。そんで適当に自己紹介でもしてくれればいいからな。」


そう言うと、ガザール先生はドアを開けた。
廊下からでも聞こえていた生徒たちの喋り声が、一瞬にして止まった。





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