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第31章





中に入ると一階は食堂のような所だった。料理を作ってくれるのは、ネージュさんっていう気さくなおばちゃん。
ネージュさんはただの料理番だけではなく、なんとこの学院で短剣の先生もしてるとか。

ネージュさんとの挨拶を済ませ、上の階へ行く。

最初こそ学園長先生の強引さに文句を言っていたものの、少しウキウキしている自分がいたのも事実だ。

どんな部屋だろう?
寮生活なんて初めてだからちょっと楽しみ!









『わぁ〜何かオシャレ!』



二階に来たら一階のアットホームな感じとはまたガラッと変わり、アンティークっぽさが感じられるフロア。

こんなとこで学生生活を送れるだなんて…!
正直私のテンションは結構上がっている。


ナイン「各部屋に制服が置いてあるんでしたよね。」

エイト「うん。取り敢えずそれぞれ着替えて、準備が出来たら一階の食堂に集まろうか。」

アルス「了解!」


皆に軽く手を振り、私は一番隅っこの部屋へと向かった。

一人部屋だから好きなことできるなぁ。
友達が出来たら部屋に呼んだりしてガールズトーク、なんてのもいいなぁ。


そんなことを考えながらドアに手をかけた時、部屋の中からしゃべり声がした。

あれ、誰かいるのかな?
どうやら一人だけではないようで、男の子の声がいくつか聞こえる。

もう一度部屋の振り分けの紙を見て、ここが自分の部屋だと確認する。
うん、間違いない。

ドアを開けようとしたが、聞こえてきた内容がどうやら学園長先生の言ってた例の事件についてっぽかったのでそのまま静止。




*「ったく納得できねぇ。オレ達の仲間ばっかりさらわれるなんておかしいぜ。」

*「なぁあれってマジかな?幽霊がさらうってやつ。」

*「あんなのただのウワサだって。そんなんでビクビクすんなよ。それよりモザイオさ、次の標的はお前かもよ?誘拐犯が来たらどうするよ。」

*「ハッ!上等だぜ!やれるもんならやってみろってんだ。そんな奴返り討ちにしてやるって。」

*「さっすがモザイオ!やっぱ頼りになるぜ!」




あ、これはモザイオさんが次さらわれるわ。
今の会話完全にフラグじゃないですか。

それにしても中々部屋から出てくれる気配がない。
このままでは埒が明かないので、仕方なく部屋に入ることにした。


ガチャッとドアを開けると、中にいた三人の男の子達が一斉に振り向く。

う、うわ…なんかガラの悪そうな人たちだな…。
第二、第三ボタンくらいまで開けたシャツにブレザーは全開。さらには腰パンときた。

人を見かけで判断するのは良くないってのは知ってるけど、さすがにこんな着崩した制服の人を見て、そう思わない方が無理だ。

若干ビビりながらおずおずと部屋に入る私に、金髪の男の子が一歩前へ出た。


*「なんだてめぇは。オレ達の邪魔すんなよ。」


しょ、初対面でいきなりそんな風に言わなくても…!
何だかムカッときたので、私は相手の目を真っ直ぐ見て話した。


『ここ、私の部屋なんだけど。間違えてない?』


そう言うと金髪男子は一瞬驚いたような顔をしたが、何かを思い出したように頷いた。


*「おう、そうかそうか。新入生が何人か入ってくるって聞いてたがてめぇがその一人だな。占領しちまって悪かったな。おい、お前らそろそろ場所変えるぞ。」

*「お、おう。」


意外とあっさり引いてくれた不良たち。
金髪男子に連れられるようにして、他の二人も部屋を出て行った。

なんだ、モラルはちゃんとあるんじゃん。

変なとこに感心しながら、部屋のドアを内側から閉めた。
外から見たら狭いかと思いきや、意外と広くて快適そうだ。

何より綺麗だしね。さすが名門校。
こんなとこも力入れてるんだな。


『ってそんなことしてる場合じゃなくて…』


さっきの人たちのせいで、私は皆よりもタイムロスがある。
早く着替えないと待たせてしまうことになっちゃうからね。

ベッドの上に丁寧に畳んで置いてある制服を手に取る。
うん、やっぱりオシャレだ…。

格好は元の世界の時のままだから、下校時だった私は当然制服。

クリーム色のセーターに、紺色のセーラー服という至って普通の格好だ。
それに比べれば、この赤を基調としたブレザーに所々入っている金色のライン、緑のネクタイといった制服は憧れそのもの。


新しい制服を目の前で広げながら、私はこれからの学院生活に胸を躍らせるのだった。





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