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第31章







*****







眩しさが引いたのを感じ、閉じていた目をゆっくりと開けた。

するとそこは……





『雪だ……!』

アルス「わあ…!凄い!辺り一面真っ白だ!」

レック「おおー!これはテンション上が……っくしゅん!!」

レント「お前露出してるもんなー…」

リュカ「ミキちゃんもスカートだけど大丈夫?」

『寒いけどレック程じゃないから大丈夫だよ!』


話す度に息が白くなって出ていくのを見て、本当に気温が低いことを実感する。
今までは春みたいな暖かい所ばかりだったから、何だかワクワクするな。


サンディ「どーよ。ちゃーんと連れて来たでしょ?んじゃあエルシオンは目の前だし、アタシはここでバイバイするわ。」

『えっサンディ一緒に行かないの?』

サンディ「ちょっと用事があるんだよねー。呼んでくれたら割とすぐ来れると思うからさ。何かあったらヨロシク!」


ぱちんっとウインクとピースを決め、ふわりと消えたピンク色の光。
サンディも色々忙しいんだなぁ。


自分の夢か…。
目的地が学校というのもあってか、少しだけ元の世界での進路のことを思い出す。
高校生になった途端模試やら将来の方向性などの話題が多くなったこと。

実感が湧かず、しかめっ面をしながら悩んでいたあの頃が懐かしく感じた。
今じゃあんな毎日も幸せの一つだったのかなぁ…。





アルス「ミキー!早く早く!」

ソロ「風邪引くぞ。」

『あっうん!ごめん!』


雪の中でぼーっと考え込んでしまっていたのか、いつの間にか皆はエルシオン学院の門の前に集まっていた。

積もった雪の上をザクザクと歩きながら、私は元の世界のことを考えるのをやめた。













***







*「ようこそ、エルシオン学院へ。私がここの学院長です。」



さっそく門の前で律儀にお出迎えしてくれたのは、学院長という名にぴったりの風貌のおじいさんだった。
こんな寒い中外に出ていて大丈夫なのかな…。



レック「へぇーここがエルシオン学院か。」

ナイン「噂には聞いていましたが大きな学院ですね。」

*「ふむ、あなた方が探偵の方ですね?」

「「「は?」」」


一体どこからそんな答えが出たのか分からないが、学院長先生の言葉に全員が聞き返す。

た、探偵って…。



『い、いえ私たちは探偵ではなく…』

*「わっはっは!またご冗談を。面白いことを仰りますな。やり手の方々だとお見受けしましたぞ。」

レント「お、おいじーさん何か勘違いして…」

*「さてと……ここで話すのもなんですから歩きながら話しましょうか。」

エイト「まったく聞く耳を持ってくれないね。



学院長先生の素晴らし過ぎるスルースキルに私たちは仕方なく黙って後をついて行く。

キョロキョロしながら学院内を進んで行くと、ここがかなりレベルの高そうな学校だというのがよく分かる。

それよりあの購買の人ずっと外で売ってるのかな。
正直屋内に場所を設けてあげた方がいいと思うんだけど…。寒過ぎでしょ。




*「実はですね…また一人うちの生徒が姿をくらまし、これで二人目になってしまいました。」

『えっいきなりオカルト展開…?!』

アレフ「ただでさえ寒いのに余計寒くなること言わないでよ〜…」

*「これ以上問題が起きれば学院の信用は失われるばかりで、ほとほと手を焼いておりますよ……。」


そう困ったようにため息をつく学院長先生。
歩いているうちにいつの間にか校舎の中に着いていた。

やっぱり外に比べたら断然暖かい。
購買の人もこの中に来るべきだと思う。




*「ですがこうして探偵の方々が来てくださったからには事件などもはや解決したようなものですな。」

ローレ「いやだから…」


もう一度学院長先生の勘違いを指摘しようとしたが、どの道何を言っても無駄だと予測したのか、ローレは口を閉じた。


*「あなた方のチカラなら行方不明の生徒を見つけることなど容易いでしょう?」

レント「かったりーな…」

「うんうん、期待していますぞ!」

ソロ「ここまでくるといっそ清々しいな。」

*「ええと……すみませんがお名前は何と申されましたかな?私としたことがど忘れを……」

『あっ申し遅れました、私はミキでこの人達は…』


そうだ、名前さえ言ってしまえばど忘れといえど聞き覚えが無かったら人違いだって分かるはず!
そう思って皆のことも紹介しようとすると、


*「おお!ミキさん!そうでした、そうでしたな!いやぁ思い出しました。」


ダメでした。

満面の笑みで調子のいいことを言う学院長先生に、ついに諦めを覚えたよ…。
私たちは目を合わせ、観念したように学院長先生に促されるようにして部屋へ入った。







*「失礼しました、ミキさん。ではこれを受け取って下され。少ないですが手付金になります。」


そう言って渡されたのは袋にじゃらりと入った2000G。
こ、こんな大金を貰っていいのだろうか…。

いよいよ本物の探偵さんに申し訳無く思ってきた。
私たちがここに滞在してる間に本物の探偵さんが来て鉢合わせしてしまったらどうなるんだろう…。

頭の中にぐるぐると浮かぶWANTEDの文字。
目眩がしそうだ。やっぱり上手く断らなくちゃ…


*「そうそう学院の者には新入生が来るとだけ告げ、あなた方の身分は伏せております。」


既に紹介済みだった…!
もし本物の探偵さんがとんでもなくおっさんだったらどうするつもりだったんだよ学院長先生…!!
無理あるよ…!



*「その方が生徒達も本音を話してくれるでしょう。捜査の助けになるはずです。」



頼みましたぞ!と一人満足げな顔をして笑いかける学院長先生に、私たちはお互い顔を見合わせるしかなかった。



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