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第31章
『ごめん皆!お待たせー!』
グランバニアの人達との別れを終え、既に外で待っていた皆の所へ駆ける。
皆はおう、だとかいいよ、とかそんなことを言って笑ってくれた。
皆と話してるリュカをちらりと見る。
リュカももう待ってたんだ…。まぁ別れを惜しんで中々旅立てないってキャラでもないしね。
でも故郷だからもっと寂しがるかなーなんて思ってたけどそうじゃないみたい。
ぼんやりとリュカを見つめたままそんなことを考えていたら、リュカが私の視線に気付いた。
リュカ「…ミキちゃん、そんなに見つめられると照れるな。」
『へっ?!えっ…あぁご、ごめん!』
過剰に驚いたのがおかしかったのか、リュカは笑っている。
いつの間にか長く見つめ過ぎてたことも、それに気付かれたことも恥ずかしい。
エイト「あれ?ミキ、目赤くない?」
『え、そう?』
レック「寝不足か?」
『い、いや…』
寝不足、という言葉を聞いて思わず昨日の出来事を思い出す。
おやすみの言葉の前に起こったこと。
こんなことを考えて眠れなくなるなんて、中学生じゃあるまいし…と自分につっこんではみるものの心拍数は上がる一方で。
さらにリュカの笑顔もセットで頭に浮かぶから、余計恥ずかしくなってくる。
ローレ「今日のお前何か変だぞ?」
ソロ「考え込んだり驚いたり赤くなったり…忙しいやつだな。」
アルス「何かあったの?」
皆が私の挙動不審な反応に、怪訝そうに尋ねる。
そ、そりゃあ変に思うよね。いきなり一人でこんなわたわたしてたら…。
そこで私はこの話題から逃れるため、口を開いた。
『そっそれよりさ!次はどこに行くの?』
アレフ「それなんだよなぁ。僕達もさっきそれを話してたとこ。」
ナイン「今回も次へ進むための手がかりがありませんしね。」
リュカ「さっき僕達が話してた内容としては、一番気になることがあの精霊ルビスについて。」
エイト「まぁ妥当だよね。」
『ルビスさん…』
たった数分だけの出来事だったんだろうけど、その光景が脳裏に焼き付いたまま離れない。
ルビスさんは一体何者なんだろう。
敵ではないっていうのは分かるんだけど。
ソロ「お前あの時その精霊の名前叫んでたよな。何か知ってんのか?」
『ううん。ゲマが攻撃する直前に声が聞こえて名前を教えてくれたんだ。私もルビスさんに関しては無知に等しいよ。』
アルス「うーん…やっぱり皆分かんないよね。どこかその精霊さんについて分かる所とかないかなぁ?」
ローレ「じゃあそのルビスの件はひとまず置いといて、俺達がさっき話してたもう一個の方を考えたらどうだ?」
『他にもあるの?』
レント「あぁ。昨日のジャムやゲマとの戦闘で俺らが手も足も出なかったことについて話してたんだ。」
アレフ「うん、ジャミね。レント、ジャムじゃないよ。」
レント「ど、どっちも一緒だろ!」
ナイン「加工食品とモンスターの差は大きいと思うのですが。」
レント「う、うっせえな。まどろっこしい名前してるアイツが悪いんだよ。」
『理不尽だよレント!…でもジャミは特殊なバリアがあったし、ゲマとの戦いの時は皆傷だらけだったんだから仕方ないんじゃない?』
ソロ「それじゃダメだろ。…いざって時に守れないと勇者の意味がない。」
『ソロ…』
後半はほとんど独り言のように言ったソロが少し気になった。
ちょっとだけ前の自分と重なって見えたのだ。
アレフ「それにねミキ、たとえ今回が例外だったとしてもどのみち僕達は強くならなきゃいけないんだ。」
レック「これから先どんな強敵が待ってるかも分かんないし。」
『そっか…うん、そうだよね。』
皆、なんだかんだ勇者してるよね。
確かに昨日みたいに…いやそれ以上の強い敵がたくさんいるんだとしたら、きっとすぐやられてしまう。
私の飛び蹴りも成功する確率は低いし。
エイト「今まで自分達だけで精一杯修行をしてきたつもりだけど、こんなんじゃ到底ダメだ。」
ローレ「どこか習える所でもあればいいんだけどな。」
アレフ「習うってそんなの学校じゃあるまいし…」
ナイン「それだ!!」
突然大声を上げたナインに、皆の肩がビクッとなるのが見えた。
本人はひらめいたと言わんばかりにアレフを指差したまま口を開けている。
何かいい方法でもあったってことなのかな?