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第29章
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世界の人々が必要としているのは、私じゃなくて勇者である皆…。
それがなぜなのか。
そんなこと、考えればすぐに出そうな答えだった。
だが自分でその答えを言ってしまえば、負けを認めたような気がしたのだ。
悔しくてぐっと手を握り締める。
ジャミ「ふん…答えられないのならオレ様が言ってやろう。…答えはお前が非力だからだ。」
『…っ!』
いとも簡単に紡ぎ出されたその答えに、頭にカッと血が登る。
淡々と言ってのけるジャミに、更に怒りが募る。
私が非力だから───。
そんな答え、とっくに分かっていたのに。
言い返したくても、当たり前のことだから言い返せない。
そんな自分にまた腹が立つ。
ジャミ「存在そのものがある限り、光を無意識に放つことで一定の平和は守られる。だがそれがいつまで続くのだろうな。」
『……。』
ジャミ「何も変わらないお前と、着々と力をつけていく魔族…。既に魔物達
は人間界に侵略を進めている。」
『……。』
ジャミ「いくつもの滅ぼされた町や城がある中、お前は今までずっと何もせず平穏な日々を過ごしていた。そして人々が必要とするのは何だ?」
『……。』
ジャミ「そこらの人間と大して変わりもしない若者を勇者と勝手に崇め、後は送り出して自分達は何もせず再び平和が訪れるのを待つだけ。人間というのはそれだけ自分勝手な奴らばかりなのだ。」
『…黙って聞いていれば……こんの…』
ジャミ「…何だ、口答えする気か?」
アレフ「あっ!!やっぱりミキだ!」
レック「本当だ!よかった無事だったんだな!」
階段の方で皆の声らしきものが聞こえたが、今の私は止められなかった。
怒りと勢い任せにジャミ目掛けて、思いっきり飛び蹴りを仕掛けたのだ。
『馬野郎がーーーッ!!』
ドカッ!!