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第29章






***





レント「さすがにもうそろそろ頂上だろ…」



いくつもの仕掛けをクリアし、階段を登り続けてからどれくらいの時間が経っただろう。
勇者達は体力的に疲れたというよりも、この塔にうんざりしてきた感じだ。




アルス「…………大臣だ…」



アルスがボソリと呟き、皆が目線を上げる。

するとそこには倒れている大臣がいた。
身なりはボロボロで、今にも息絶えそうだ。

全員がバタバタと駆け寄る。




ナイン「大丈夫ですか?!」


大臣「う、うぅ…」


リュカ「大変だ…今すぐ回復を…」


大臣「わ、私が間違っていた…。や、やはり怪物などにチカラを借りるのではなかったわい…。」



苦しみながら途切れ途切れに話す大臣。
やはりレントの推理通り、裏切り者は大臣だったというわけだ。
回復魔法を唱えかけていたソロの手が止まる。



大臣「このままではグランバニアの国だけでなく世界までも……。許してくれい…!リュカ殿…!ぐふっ…」



最後の力を振り絞って言ったリュカへの謝罪と共に、大臣は力無く目を閉じた。
そして大臣の体が少しずつ透けていき、跡形もなく消えてしまった。



アレフ「き、消えた…」


ナイン「大きな罪を犯した人間ですから…。普通の人と同じように天へ召されるわけにはいかないんです。」


ローレ「それも天使の役目ってわけか。」


ナイン「ええ。ですがこういった場合の人間は上級天使が行いますから僕はしたことはありませんけどね。なのできちんとした道へと導いて行って下さるでしょう。」



そう話すナインは少し寂しそうでありながらも、懐かしそうな様子だった。
それを見たレックがわしゃわしゃとナインの頭を強く撫でる。



ナイン「わっ…な、何するんですか!」


レック「バーカ!たとえ天使じゃなくなったとしても俺らがいるだろ!最っ高の仲間がさ!」


ナイン「べっ…別に寂しくて言ったわけじゃ……!」


レック「よっしゃ!次行こうぜ次!もうてっぺんだろ!」


ナイン「人の話を聞いて下さい。…って首に腕回さないで下さ…苦しっ」



そんな二人に他の勇者達は顔を見合わせて苦笑し、きっと次が頂上であろう階段へ上がって行った。







***





リュカ「…やっと頂上みたいだね」



階段を上がり切って出た所は周りに壁も何もなく、吹き抜けになった屋上。
風が音を立てながら強く吹き荒れ、空も濁った雲に覆われている。



アルス「なんか嫌な雰囲気…」


エイト「はぁ…どうやら邪魔者がいるみたいだよ皆。」



エイトがため息をついて剣を鞘から抜くのを見て、皆がその目線の先へと意識を移す。

そこには普通とは少し違った雰囲気のオークがニヤリとした笑いを浮かべながら立ちはだかっていた。



*「ほほう…ここまで来るとは大したヤツらだな。しかしこれ以上はこのオレ様を倒さぬと進めぬぞ。残念だったなっ!」


アレフ「ほんと残念〜」


レント「セリフからして雑魚キャラ〜」


ローレ「かませ役」


*「なんだと?!貴様ら!!黙って聞いていれば好き放題言いやがって!!」



ロト組三人から散々な言われようのオーク。
わなわなと震え、持っていた長い槍をブンブンと勢い良く回し始めた。
相当怒っているようだ。



リュカ「また挑発させるようなこと言うから…」


レック「相手してやりたくても今はあんま時間ねーんだよなー」


ソロ「さっさと終わらせるぞ。」



そして一斉に斬りかかり、攻撃呪文を唱えるとみるみるダメージを負っていくオーク。
次第に攻撃数も減り、カラン…と槍を落とした。



ナイン「大口を叩いてた割に大したことなかったですね。」


*「そんな…。このオレ様がやられるとは…ぐふっ!」


エイト「最後の最後まで雑魚キャラを通し切ったね。」



するとオークの姿が消えた直後に、通路を塞いでいた大きな石像もフッと消えた。

次に進めるかと思いきや、またまた現れる新たな敵。
先程と同じように通路を塞ぐ石像があるということは、倒さなくては通らせてくれないようだ。



アレフ「今度はちょっと豪華なキメラか…」


*「ケケケ!うまそうなヤツらがやって来たわい!さっきの女もうまそうだったがあの女はジャミ様に取られてしまったからな…かわりにお前らを食ってやろう!ケケケ!」



舌舐めずりをしながら羽をバサバサと動かし、近付いてくるキメラ。
しかし勇者達はそんな存在なんてどうでもよかった。
それよりもこのキメラが言った言葉にハッとする。



ローレ「さっきの女ってまさか…」


アルス「ミキ、だよね…?!」


レント「お、おいキメラ!!その女ってどんな奴だったんだ?!」


*「わしをそこらのキメラと一緒にしてもらっては困る!わしはキメーラLv.35で」


レント「んなこたぁどーだっていいんだよ!!」


*「ひっ…!ど、ドレスみたいなもんまとってたぜ。あと綺麗な髪飾りもな。そういや結構いい女だったな…ぐふぅッ!!



ソロ「……次行くぞ」



静かに剣を鞘にしまい、背を向けて歩き出すソロ。
全員が固まったままその姿を目で追う。



レック「ひゅ、ヒュー。ソロ、やるぅ…」


ナイン「会心の一撃に加え、怒りの一撃さえも垣間見えたのは気のせいでしょうか…」


エイト「僕の分までしてくれたみたいで何よりだよ。」


*「おめえ…強いじゃねえか…。けどジャミ様には敵わねぇぜ。ケケケ…。ぐふっ!」



最後に呻き声を上げ、息絶えたキメーラLv.35。
オークと同じように姿を消し、石像も姿を消した。



ローレ「どうでもいいけどあいつら最期にぐふっ!って言わないと気が済まないのか」


アレフ「ほんとにどうでもいいけど僕も思った。僕たち思考似てるね!やっぱ血が繋がってるだけあるわー」


ローレ「ごめん全然嬉しくない


アレフ「さ、最近ローレが反抗的なんだけど!反抗期なの?!ねえリュカ聞いてよー!…ってリュカ?」


リュカ「ジャミ…あいつ…」


アルス「ど、どうしたのリュカ?顔色悪いよ?」


リュカ「…あ、ああごめん。いや、大丈夫だよ。次に進もう。」



皆が心配そうに見つめるが、リュカは何も言わず厳しい顔で奥の階段へと足を進めた。


「……人間…のは…分勝手…」

『……って聞い…れば…』



すると、階段の下から聞こえる誰かの話し声。
小さくはあるが、おそらくミキの声だと全員が認識する。



ナイン「…っ急ぎましょう!!」


レック「あぁ!」



頷き合った勇者達は、バタバタと急いで階段を駆け下りて行った。



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