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第29章





階段を更に上がって行くと、今度は大きな穴が開いているフロアへと移り変わった。
それを見てまた面倒臭そうなことをしなくてはならないのかと予想し、苦い顔をする。



ナイン「またおかしなフロアに来ましたね。」


ソロ「結構道のりが長いな。」


エイト「でもこの穴の周りにある沢山の岩はなんだろう…?」



エイトの指摘するように、大きな穴の周りを囲むようにして置かれているたくさんの岩。
さっきアルスが利用しようとしていた岩と同じくらいの大きさのものばかりだ。



アレフ「見て見て!この下にさっきの像が並んでる。」



アレフが穴を覗き込むようにして一つ下のフロアの様子を見る。
それにつられるようにして皆も覗き込んだ。



レック「そんなに高くないぞ…。これなら飛び降りても無傷だな!」


アルス「そうだね。これならグランバニアに着く前の洞窟で飛び降りた所の方が高いや。」


レント「……。おいアルス、さっきのお前の作戦を使うことになるかもしれねーぞ。」


アルス「え、さっきの作戦って……皆で手を繋ぐやつ?


レント「そっちじゃねぇよ。



一瞬きょとんとはするものの、アルスがああ!と気付く。
そしてもう一度穴の下を覗き込んで、このフロアの全体を見回した。



アルス「そっか!ここにある岩をどんどん下に落としていって、その後僕たちも降りて像の前に落とした岩を移動させるんだね!」



そう言うやいなや、アルスはさっそく近くの岩を押し動かした。


が、


アルス「…う、うーん…!」



中々前に進まない。
他の勇者達に比べ、一番小さいアルスにとっては少し岩が重いようだ。


それを見かねたローレが、ため息をついて前へと出た。



ローレ「貸せ」


アルス「え…」


ローレ「お前じゃ無理だろ。非力過ぎて。」


アルス「ひ、非力は余計だよ!」


ローレ「いいからどけろ。」



そう言うと、アルスは一応お礼を言いながら横に寄った。
それを確認したローレは岩に手を当て、グッと力を入れた。


ゴゴ…


するとアルスの時とは違い、軽く押しただけで簡単に岩が動いた。
そのまま押して行き、穴の下へと真っ逆さま。
ズシッ…という重い音が下で響いた。



ローレ「なんだ、案外軽いじゃん。」


ナイン「さすが力自慢のローレですね。」


レント「おおー!よかったなローレ!お前が役立つ時が来たじゃねーか!」


ローレ「いつも役立ちまくりだっつーの。」


ソロ「せいすい係が何言ってんだ。



だが、岩はこれで終わりではない。
あちらこちらにまだたくさんある上に、ただ落とすだけではなく少し場所を考えながら落とさなくてはならない。



アレフ「ローレ一人じゃ大変だろうからエイトも手伝ってやりなよ!」


エイト「えっ。何で僕?」


アレフ「何かを力一杯押し動かす姿がなぜだかしっくりくるから。


レック「それすっごい分かる。なんか重たいもの押し動かすエイトを想像したり見たりすると何かフィット感が半端ない。」



二人とも頷き合って、エイトに岩運びを促す。
エイトはまぁ構わないけど…と言いながら他の岩へと移動した。


リュカ「二人だけっていうのも大変そうだよね。アルスがどこに落とせばいいのかを指示して、僕たちがそこに岩を落として行こう。」


ナイン「確かにその方が効率がいいかもしれませんね。」



そして全員はアルスの言われた通りの所へと移動し、近くの岩を動かし始めた。

すると、今まで順調に運んでいたアレフが急に唸り出した。



アレフ「う、うおお…!!」


ソロ「なんだよ、もうバテたのか?」


アレフ「違うよ…!何かこの…ッ岩だけやけに重くて…ッ!」



ぐぐぐっと力一杯押すものの、ほとんど前に進まない岩。
色んな角度から押してみてもビクともしない。



アレフ「ふおおッ…!!」



と、もう一度力を振り絞った瞬間、



ドカァーンッ!



大きな爆発音と共に、爆発した岩の破片が飛び散った。

もくもくと立ち込める薄い煙に包まれているであろうアレフに、周りが恐る恐る声をかける。



レック「お、おーい…大丈夫かーアレフー…」


リュカ「今の爆発の仕方は…ばくだん岩かな…」


エイト「みたいだね…。」



すると、消えかかってきた煙の中からアレフの小さい声がした。





アレフ「…けほっ…僕もう絶対この塔にクレーム入れるから…」





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