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第29章






ソロ「案の定これかよ」



ソロの目線の先にあるのは先程の石像が両端にいくつも立ち並んだ一本通路。
ここがただの歴史ある塔であれば、あの石像もただの歴史ある見物用の置物に過ぎない。

だが今いる場所は魔物の住処となり、トラップもそこそこあるいわばダンジョンだ。



エイト「はぁ…ここまでされてトラップだと思わないマヌケな人なんてさすがに」


レック「なんだただの石像じゃねーか。ほら行こうぜ!」


アレフ「やっぱりねー。僕の言った通りだ!」


ローレ「いたな、マヌケ共が。


ナイン「じょ、冗談ですよね…」




しかしマヌケな二人は笑顔でその通路に向かって一直線。
他の皆は止めることなく、無表情で視線を送るだけ。
唯一リュカとアルスだけは止めようとしたが、ローレが二人の肩に手を置き、無言で首を振った。

そして一番手前の二つの石像の間に一歩踏み入れた途端、


ボゥッ…!


「「ぎぃやあぁぁあっちぃぃ!!」」


叫び声を上げて一目散に戻ってくる二人。
ゼーハーゼーハーいっている二人を尚も無表情で見つめる残りの勇者たち。

想像通りの光景ではあったが、いざ目の前にすると笑いが出そうになる。


リュカ「……ふふっ」


ローレ「…ほんとお前らアホ過ぎ」


レック「………。」


ソロ「分かった。分かったから。だから涙目でこっち見てくんなレック。


アレフ「さ、さっきの槍といい…相手に対する礼儀ってもんがなってないよ…!この塔いつかクレームくるからねほんと!」


エイト「無機物相手に何を言ってるの。


ローレ「でもこれじゃ進めないぞ。どうすんだ?」



ローレの言葉に、またもや眉間にシワを寄せて考え込む。
だが、そこで頭の回転の速さではピカイチの2人組がひらめいた。



アルス「岩だ!」
レント「ジグザグだ!」



「「「え?」」」


同時に違うことを発した二人に、思わず全員が聞き返す。

岩とジグザグ?
どうやら言った本人達もお互いの言動が理解できていないようで、顔を見合わせて怪訝そうにしている。



リュカ「ええっと…取り敢えず二人の考えを聞いてみようか。アルスの岩っていうのは?」


アルス「あのね、一番手前の像の前に少し大きめの岩があるでしょ?」


ナイン「ありますね。」


アルス「あれを像の前に置いて行って進んだら火は防げるんじゃないかなって。ほら、丁度像の口元が覆われるくらい大きいし!」



ねっ?というように説明をするアルスに皆はなるほど、と頷く。
さすが謎解きが得意なアルスというべきだろうか。
頭脳戦には持ってこいである。



ソロ「じゃあそれで行くか。」


レント「おいおいおい!


ローレ「何だよ。」



慌てて皆を呼び止めるレントに、面倒臭そうに振り向く。
それにもカチンと来たのか、レントはわざと挑発的な態度で話し出した。



レント「岩をいちいち動かして進むだぁ?んなかったりーことしてられっかよ!」


アレフ「じゃあどうするっていうんだよ?」



その質問を待ってましたと言わんばかりに、レントは顔をニヤリとさせる。
そして親指で石像が立ち並ぶ通路を指した。



レント「いいか、像の隣をよーく見やがれ。人一人分が入れるくらいの隙間があんだろ?」



言われた通り、指差した方向をよくよく見てみる。
すると確かに石像の隣には少しだけ間が空いているのが見えた。



レント「あれを使って、斜めに突っ走るんだ。隙間から隙間へジグザグ移り走れば火が出るのは一瞬だぜ。そんな一瞬くらい避けられるだろ?」


リュカ「なるほど、考えたね。」


エイト「推理組のそれぞれの性格が表れた考えってわけか。」


ソロ「で、結局どっちの作戦で行くんだ?」



どちらでもいいと言えばいいのだが、どうやら当の本人達はそうもいかないわけで。
アルスとレントはお互いに睨み合っている。



アルス「岩!」
レント「ジグザグ!」



レック「なぁなぁ!じゃあ俺ジグザグで行ってもいいか?!何か楽しそうなんだもん!」



一人キラキラした目で、さっそく陸上のポーズのように構えたレック。
その姿はとてもワクワクした楽しそうなものだった。



ナイン「さすが体育系勇者ですね…。」


リュカ「走り去る姿も爽やかスポーツマンだね…。」



シュタッとすばやく走り切り、向こう側でふぅーっと腕で額の汗を拭うレックを見て、全員が呆れるように笑った。



レック「ほらー!皆も来いよー!結構楽しいぞ!」


ローレ「…どうやら今回はレントの作戦で進むみたいだな。」



ローレが横目でアルスを見ながら言った。
アルスはちょっとだけ口を尖らせたが、しばらくして笑みを溢し、その案を実行することになった。



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