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第28章
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アレフ「ま、まだ着かないの…」
ナイン「結構上には来たとは思うんですけど…」
何度も階段を上がり、どんどん上には行ってることは間違いない。
だが到達点らしき所は未だ全く見えていなかった。
段々と歩く足も重くなる。
リュカ「外から見た感じでは10階くらいだったからそこまで高いわけじゃないんだろうけどフロアが広いからなぁ…」
レック「……なぁリュカ。」
リュカ「ん?」
皆よりも何歩か手前でフロアを見渡すリュカにレックが声をかけた。
他の皆も何か言いたそうな目でリュカを見ている。
レック「さっきから倒したモンスターがぞろぞろついて来てんだけど。」
後ろを振り返って見てみると、先程倒したモンスターの何匹かが仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
レント「超尊敬されてんじゃん。」
ソロ「もしかしてずっとついて来たのか?」
ソロがそう尋ねると、モンスター達は首をコクコクと縦に振ったり飛び跳ねたり、それぞれ肯定の仕草をした。
その目は相変わらずキラキラしている。
リュカ「あー…あはは…。ごめん全然気付かなかった。」
エイト「でもどうするの?この人数だから目的地まで連れてくわけにもいかないし…」
リュカ「そうだよね、うーん…」
少し考える仕草をしたリュカはゆっくりとモンスター達に近付き、片膝をついて目線を合わせた。
リュカ「ごめんね、今は君たちを連れていくことはできないんだ…だけど旅が落ち着いたら必ずまた迎えに来るから。それまで待っていてくれるかい?」
少し残念そうにはしたものの、モンスター達はまた肯定の意を表した。
その様子を見てリュカは優しく微笑み、立ち上がった。
リュカ「じゃあ次僕が来る時までに、しっかり鍛えておいてくれよ。楽しみにしてる。」
その言葉を聞き、モンスター達は喜んで元の場所へと戻って行った。
こんな言葉をモンスター相手にかけられるなんて、モンスターがリュカに惹かれるのは人柄の良さも十分に含まれているんじゃないかと思う勇者達だった。
アルス「やっぱりさすがリュカだよね。モンスターまで惹きつけちゃうんだから。」
リュカ「そんなことないさ。やろうと思えば誰だってできることだし。」
アレフ「謙遜し過ぎだよ〜。僕なんて仲間に入らせる気満々で見つめてるのに一秒も経たない内に襲い掛かかってくるからね。」
ローレ「当たり前だろ。俺だってお前に見つめられたら戦闘意欲しか湧かないわ。」
アレフ「そんなひどい」
レント「あっ!おい、あれ見てみろよ!」
いつものやりとりをしていると、レントが何かに気付いて指を差した。
そこにはドラゴンをモチーフとした大きな像が二つ向かい合っている。
ナイン「どうやらあるのは像だけじゃないみたいですよ…」
エイト「うわ…骸骨…」
通路の真ん中に毒のような液体と骸骨があった。
向かい合ったドラゴンの像に見つめられるようにして落ちている骸骨。
なんとも不気味な光景である。
レック「宝箱も何もないのにあんな場所行かないよな。」
アレフ「うん、なんなんだろうねあれ。まぁ先行こう。」
レント「いや…でも何かを示してる気がすんだけどな…」
アルス「…僕もそう思う。じゃなきゃあんなとこにわざわざ怪しい像も置かないよね?」
その言葉に一度足を止める。
確かにトラップ的なものにも見えなくもないが、何もないというのも事実だ。
リュカ「パーティーの謎解き組が二人揃って言うくらいだからね。何かあるのかもしれないから気をつけて行こう。」
皆で頷き、用心しながら次に進むことを決意した。