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第27章
くそッ……!!
レントは城内を歩き回りながら、拳をぎゅっと握り締めた。
ギリギリと音が聞こえるくらい力を入れた手の痛さよりも、もっと他のどこかに激痛が走っている感覚に襲われる。
行き場のないこの気持ちに、イライラが募る。
どうしていつもこうなっちまうんだ…!
あんなに守るって誓ったのに。
何でいつもいつもあいつばかり狙われる。
何で毎回危険な目に合うのはあいつなんだ。
レント「…っ何で俺じゃないんだよ…ッ!!」
ドンッ!と壁を強く殴る。
感情的になってしまうのは俺の悪いクセだ。
だがどうしても抑えきれない。
なんであいつらは冷静でいられるんだよ。
ミキがさらわれたんだぞ?
こんな所でどうこうしてる暇はないんだ。
早く…一刻も早くあいつの元へ行ってやりたい。
城で話を聞いて回るにつれて大きくなるこの感情。
その反面、何も分かっていないこの状況で助けに行くなど無駄であることは理解していた。
そうだ、今はとにかく情報を集める他ないんだ。
壁から手を離し、気分を少し落ち着かせる。
レント「俺にできること、か…」
『えー凄い!レント何で分かったの?』
「いや、目の前にいかにもっつーレバーがあったから…。」
『凄いね!私全然気付かなかった。』
いつだったかあいつに褒められた、唯一の俺の得意技。
レント「他の奴らなんかに任せらんねぇ。この俺が頭を働かせなきゃな…」
壁を殴った時にできた拳の傷に、小さくホイミを唱えながら、近くでオロオロと慌てふためく王の所へと駆け出した。