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第26章
しかし、リュカは玉座には座らなかった。
そのかわりに少し前へ一歩踏み出し、皆を見渡す。
リュカ「皆、今日はこんなにも素晴らしいパーティーを開いてくれてありがとう。感謝します。そして、一つだけ伝えたいことがあります。」
リュカがぎゅっとマントを握るのが見えた。
リュカ「僕は、王にはなりません。」
その一言を告げると、一気にざわざわし始めた。
さっきの期待の表情とは違い、今度は困惑の色が見える。
だがそれを遮るようにリュカは話を続けた。
リュカ「確かに僕はかつてのグランバニア国王であるパパスの息子で、跡を継ぐ権利があるかもしれない…。
でもその前にやらなくてはいけないことがある。
遂げなければならない大きな目標がある。
そして、救わなければならない世界がここにある───。」
ざわめきがまたピタリと止んだ。
するとリュカは私達の方へと目を向けた。
その目はとても穏やかだった。
リュカ「その大きな壁を共に乗り越え、戦ってくれる大切な仲間がいる。
守らなければならない…いや、守りたい大切な人がいる。
彼らとの旅をここで終わらせるわけにはいかないんだ。」
もう一度城全体に向けたリュカの瞳は本気だった。
強い意志が読み取れる。
それがお城の人々にも伝わったのか、さっきの困惑したものとはあきらかに違う、そして最初の期待感ともまた違う期待の気持ちが感じられた。
リュカ「僕が旅をしている間、グランバニアはオジロン王に任せる。」
そう言うと、オジロン王はハッとしたようにリュカを見た。
リュカ「父であるパパスがいない間、ずっとこの国を守ってきてくれたオジロン王に、僕はもう一度グランバニア国王に推薦したい。」
オジロン「リュカ……。」
オジロン王は目にうっすらと涙を浮かべている。
オジロン「くぅ…!響いた!!心に響いたぞリュカよ!!お前の思いはしかと受け取った。皆の者!この国は引き続き余が守ってみせるぞ!さぁ、祝賀の宴の始まりじゃ!!」
その言葉を合図にその場にいた全員がリュカに向け拍手を送り、心から感動し、喜びの意を表した。
またオジロン王の英断にも喝采を浴びさせ、パーティーが始まった。