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第24章
アレフ「やっと…着いた…」
ローレ「長い道のりだったな…」
皆げんなりと疲れた様子で、目の前にある王の証を力なく見上げる。
これまでのさまざまなトリップをクリアして、やっとここまで辿り着いたのだった。
エイト「ほらさっさと証取ってさっさと帰るよ。」
アルス「エイト、何であんなに元気なの…」
ソロ「元気なんじゃなくてキレてんだよ。」
レック「エイトさっきのトリップでびっしょ濡れだもんな。」
ナイン「しかも皆手伝いもせず逃げましたからね…。まぁ僕もですけど。」
レント「だってなんかあいつが岩を力一杯押す姿がすっげぇしっくりきたから任せただけだし。オレワルクナイ。」
リュカ「ま、まぁ皆。目的地はもうすぐ目の前なんだから…」
エイト「グズグズしないでくれる?」
レント「あいつ相当怒ってんな。」
岩を指定された位置に移動させ、先へ進むという仕掛けに抜擢されたエイトは、その岩がスイッチとなったせいで勢いよく溢れ出した水をもろにかぶってしまったのだ。
そのおかげもあってここまで来れた訳だが。
そしてリュカが王の証に手を伸ばそうとした時、
*「おっと待ちな!!」
突然投げかけられた大声に、皆がくるりと振り返る。
レント「あっ!お、お前…!」
アレフ「何、レント知り合い?」
ローレ「パンツ一丁。」
ソロ「随分と変態な知り合いだな。」
リュカ「とても放送できるレベルじゃないな。」
アルス「小さい子が見たりしたら大変だね。」
ナイン「悪影響間違いなしです。」
レック「やっぱレントの知り合いだけあるわー。納得。」
[カンダタはボロクソに言われた。]
レント「レックお前後で覚えとけよ。知り合いっつーか…。お前カンタダだろ?」
*「カンダタだ!」
ソロ「どっちも似たようなもんだろ」
*「ふっ…有名人は辛いぜ…こんな初対面な奴らにも知られてるなんてな。」
ナイン「あー…これは間違いなくレントのお知り合いの方ですね。」
レント「どぉーっゆぅーっ意味じゃコルァーッ!!」
アルス「お、落ち着いてレント!」
ソロ「少しは黙れよ単細胞」
リュカ「ソ、ソロ…!余計なことを…!」
レント「アレフてめぇのサークレットにギガデイン放つぞ!!」
アレフ「僕何もしてないよ!?」
*「あ、あの…」
[カンダタは完全に忘れ去られている]
*「いつまでも俺の存在を無視しやがってぇ…!!おい野郎共!やっちまえ!!」
「「おう!!」」
アルス「あれ、他にもいたんだね。僕全然気付かなかったよ!」
アルスが純粋な笑顔で正直なことを述べた。
悪気がないだけに余計たちが悪い上、相手に突き刺さるダメージは倍増だ。
「「くぅっうっうっ…アニキぃ…っ!俺たちの存在っがっ…ううっ」」
*「えぇ〜いしっかりしろ!さっさと王家の証を奪い取るんだ!」
“王家の証”という言葉に、それぞれが反応する。
さっきまで騒がしかったのがピタリと止んだ。
*「悪いが王家の証を持って行かせるわけにはいかねぇなぁ!リュカさんが王になるのをイヤがる者もいるってわけよ!」
リュカ「え、僕?」
*「シーッ!余計なことを言うな!」
ローレ「リュカが王様になるのを嫌がる…?」
レック「こんな朗らかなリュカを嫌うって相当限られてくるな…」
*「とにかく王家の証は渡さないぜ!」
そう言い切って、カンダタ達は一気に襲いかかってきた!
皆もそれぞれに武器を構え、戦闘体制へと入りかけたその時
エイト「ねぇ、もう話は終わったの?」
今までずっと黙っていたエイトがついに口を開いた。
その場がシーン…と静まり返る。
アレフ「こ…れはヤバイぞ…」
ソロ「カンダタ終わったな」
エイト「終わったんならもういいよね?今度は僕からお話があるんだぁ。」
ニコニコと笑顔を顔に浮かべながら、スタスタとカンダタ達に歩み寄るエイト。
笑顔ではあるがこんな怖い笑顔は見たことがない。
皆もそのエイトの異様な雰囲気を察し、黙って動きを止めて目で追っている。
カンダタ達もそのただならぬ気に圧倒されたのか、怯えて動けないようだ。
エイト「もっとも、言葉はいらないお話だけどね。……ハァッ!!」
ドカッ
バキッ
「「ぐはぁっ…!」」
ドサッとカンダタの子分達が倒れる。
ここまで約1.058秒。
すばやいかつ威力たっぷりなエイトの爆裂拳により一発で子分たちを失ったカンダタはというと、一瞬の出来事すぎて何があったのかまだよく理解できていないようだった。
エイト「あと残ったのは、君だけだね。」
先程と同じ笑顔であって本当の笑顔でない表情を作り、どす黒いオーラを身にまとったエイトがじりじりとカンダタに向かって行く。
そこでハッと我に返ったカンダタが、身の危険を感じた。
*「ひっ…ひぃいぃ!!わ、悪かった!!本当に悪かった!だから今回は見逃してくれ!頼むよ!なっ?なっ?」
恐れをなして急に謝り出したカンダタ。
さっきとは打って変わって実に情けない姿である。
すると、今度はエイトではなくレントが前に出てカンダタに詰め寄った。
レント「情けねぇなぁカンダタぁ?さっきまでの威勢は一体どこ行っちまったんだろうなぁ。」
ローレ「あれじゃあどっちが悪者か分かんねぇよ…」
アルス「確かに…」
口角を上げ、ニタァ…と笑うレントは確実に悪人だった。
カンダタの態度がどんどんと小さくなっていく。
レント「まさかこの世界にまでお前がいるとはな。ロマリアで金の冠は盗むし…お前のせいで旅の途中で余計な足止めくらったじゃねーか!」
*「そ、そんなことをした覚えは…」
レント「あ?」
*「ひっ…!な、なんでもありません!」
ナイン「完璧に悪役ですね…」
レック「どこのチンピラだよ…」
レント「外野聞こえてっぞ。おいカンダタぁ…今日という今日は許さねぇぜ。覚悟しろ!!」
*「う、うわあぁぁ!!」
エイトとレントによってあっさり倒されてしまったカンダタとその子分。
無事、勇者達は王家の証を手に入れることができたのだった。