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第23章
リュカ「ミキちゃん」
『あっ、リュカ!お話はもう終わったの?あれ、ていうか皆は?』
リュカ「うん。皆は今下にいるよ。大勢で来るのもなんだしね。」
皆が出て行った後、しばらくしてリュカが一人で部屋に来てくれた。
リュカ「具合はどう?」
『だいぶ良くなったよ!それで何のお話だったの?』
リュカ「あぁそれなんだけど、今から王の証を取りに行かなきゃいけないことになったんだ。」
『えっ王の証?今から?』
リュカ「うん。近くに試練の洞窟っていう所があるんだ。王様になる人達は皆必ず受けてきたしきたりらしい。だから…」
『ふふっ…分かってるよ。リュカのお父さんも受けたしきたりだもん。リュカも同じように受け継がなきゃね!』
私がそう言うとリュカは面食らったような表情をした。
何だか前もこんなことあったような。
リュカ「…そうだね。やっぱりミキちゃんには何も言わなくても分かっちゃうんだなぁ。」
そう苦笑するリュカ。
全然、そんなことないのに…。
リュカについて私が知ってることなんて、きっとこれっぽっちもない。
リュカ「…どうかした?」
『あっ、いや何でもない!そういえばリュカ、このお城で暮らしてた時のことって覚えてたりするの?』
リュカ「…ふふ、どうだろうね…。でもグランバニアに来た時、不思議と懐かしい気持ちになったよ。」
『そっか…やっぱり故郷って体が覚えてたりするものなのかな。でもいいなぁー!覚えてないとはいえ、子供の頃からこんな素敵なお城で素敵な王子様時代を過ごしたなんて…』
綺麗な装飾でキラキラしている部屋の内装や、高価そうな絵画と置物を見渡しながらリュカに言った。
『そうなるとリュカの子供は王子様かお姫様なわけだ!リュカの子なら絶対美男美女だろうなぁ…』
リュカ「あはは、そうかな?…ミキちゃんはお姫様とかに憧れたりするの?」
『まぁね。やっぱ女の子ですから!ま、王家の娘でもなんでもないし今更お姫様とか無理なんだけどねー!』
あははっと笑ってみせる。
憧れるだけならタダだよね。
やっぱ女の子だし、一度は綺麗なドレス着て素敵なお城であわよくば白馬の王子様が…ってさすがにメルヘンすぎるか。
リュカ「…そんなことないよ。」
『へ?』
リュカ「お姫様っていうの、まだ間に合うんじゃないかな?」
“お姫様”が間に合う?
リュカの発言にどういうことだろうと小首を傾げる。
するとリュカはニコリと綺麗な笑顔を作った。
な、なんというか貴族の微笑み、って感じだろうか。
リュカ「僕の隣、空いてるよ?」
『え?えーっと…ごめん椅子はリュカが座ってるのしか見当たらないんだけど』
リュカ「ふふ、今はまだ分からなくていいよ。」
そう笑顔ではぐらかすリュカ。
リュカはいつもこうだ。
『もう!そこまで言ったんなら教えてよー。』
リュカ「秘密」
『ヒントだけでも!』
聞き出すと余計気になってきた私は頑張って食い下がる。
するとリュカは仕方ないなぁというように笑った。
リュカ「今はまだ皆のお姫様でも、いつかは───」