第18章
第18章
レック「もうそれ以上言うな…!」
レックが苦しそうに言った。
私は涙が止まらない。
『言うなって言うけど、…こんな……私の気持ちが……レックに、分かる…?』
本当はこんなことが言いたいんじゃない。
だけどうまくまとまらない。
レック「…分かんねぇよ。ミキじゃねぇもん。」
『…っ…ひっく…』
レック「だけどなミキ。そんなこと気にしても仕方ないよ。」
『…ぐすっ…うっ…』
レック「だってどれも過去のことだろ?そんなことに囚われたって、前には進めない。」
レックが片手で私の頭を撫でながら言う。
『でも…っ、私なんか力がないし…っ…皆に守られるばっかりで…っ…迷惑かけて…っ』
その言葉に、レックが溜息をついた。
レック「…ミキ、いつ俺達が迷惑だなんて言った?俺達がミキを守るのは、"義務"じゃない。俺達がミキを守りたいから…そういう"意思"だ。」
『……"意思"…っ…?』
そういえば、いつだったかナインも似たようなことを言ってたな…。
――迷惑だなんて思ってない。――
――ミキが無事ならそれでいい――
レック「だからさ、ミキ。これからは俺達の事もっと頼れよ。一人で頑張り過ぎんな。溜め込むな。"特別"っていうのが重荷なら、俺が一緒に背負ってやる。俺だってミキに導かれた、"特別"な勇者なんだから。」
『"特別"…』
そっか…。
私には、これが重荷だったんだ…。
今まで普通に暮らしてきた普通の女の子だった私に、突然降り懸かった運命。
それが私の心を弱くしてたのかも。
レック「光の神だから、って無理しなくていい。ありのままのミキでいればそれでいいよ。」
『…うん。そうだよね…。…ありがとう、レック…。』
私がそう言うと、レックが抱きしめていた腕を緩め、私を見た。
そしてふわりと優しく笑い、ポンポンと私の頭を撫でる。
その優しい仕草に、少しドキッとしたのは気のせいだろうか。
レック「まぁ…本当は俺だけの"特別"な存在だと嬉しいんだけどな。」
『え?』
レック「いや、何でもない。これはまた今度言うよ。」
『?』
私は意味が分からず、キョトンとしてレックを見た。
レック「じゃあ俺はそろそろ皆の所に戻るわ。あいつらにミキが目を覚ましたこと伝えないとな。」
そう言って部屋を出ようとするレックに、私は再び声をかけた。
『レック!』
レック「ん?」
『あの…本当にありがとう。私…えっと…とにかくありがとう!』
レック「もういいって。そんなに言われると…その…照れるだろ!もう寝とけ。おやすみ。」
バタン
レックが出て、部屋が急に静かになった。
だけど、不思議と寂しさは感じない。
抱きしめてくれたレックの、ぬくもりがあったから。
いつの間にか、あんなに溢れていた涙はすっかり乾いていた。
私はその目を閉じ、疲れもあってかすぐに眠りについた。